消費増税と「エリートの反逆」〈後編〉 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

消費増税と「エリートの反逆」〈後編〉

自殺を逃れようとして、別の形での自殺を選んでしまった!

■消費税導入への道

 1970年代当時の日本は、政党や自治体が、福祉をはじめとする社会保障の拡大や無料化を競って進めたがるなど、たしかに平等志向が行きすぎた面がありました。この場合、「勝ち組」にあたる人々が割を食うことになりますので、放っておけば社会的活力はたしかに低下しかねません。

 グループ1984年が、そんな社会のあり方にたいして「エリートの反逆」を企てたのにも、相応の根拠というか、必然性があったのです。しかし困ったことに、彼らの主張は「『負け組』の人々が割を食うようにするのは、甘えを克服して自立心を持たせる効果を持つ点で、彼ら自身のためにもなる」という含みを持っていました。

 税を取ることが、取られる側の人格的成長につながるのですから、政府にとって、こんな都合のいい理屈はありません。はたせるかな、グループ1984年の政治学者たちは、そろって自民党のブレーンとなりました。

 さてクイズです。彼らがもっとも活躍した内閣はどの内閣でしょう?

 ピンポーン! 大平内閣と中曽根内閣です。消費税導入への道は、こうやって敷き詰められていったのです。

「日本の自殺」に感銘を受けた土光敏夫さんも、1980年代初頭、「第二臨時行政調査会」(第二臨調)の会長に就任、今でいう「(構造)改革路線」のさきがけとなります。消費税実現に大きな役割を果たした経済学者の加藤寛さんも、第二臨調のメンバーでした。グループ1984年のメンバーではなかったものの、意見の合うブレーン同士として、交流があったのは間違いありません。

 消費税は「1975年に起きた『エリートの反逆』が、約15年の歳月を経て、政府の方針となったもの」なのです。

 ところがこの15年の間に、世界では大きな変化が起こります。新自由主義と呼ばれる理念がアメリカやイギリスで台頭、各国に広まっていったのです。

KEYWORDS:

オススメ記事

佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路
平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路
  • 佐藤 健志
  • 2018.09.15