【江戸時代の「女を鑑定する」専門職、女衒(ぜげん)の仕事】 | BEST T!MESコラム

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江戸時代の「女を鑑定する」専門職、女衒(ぜげん)の仕事

吉原の舞台裏を覗く 第3回

江戸時代に遊郭が設置され繁栄した吉原。その舞台裏を覗きつつ、遊女の実像や当時の大衆文化に迫る連載。

写真を拡大 図1『跡着衣装』(十返舎一九著、文化元年)

 図1は、兄と称する男(右下)が、女(うつむいて座っている)を妓楼に連れてきて、売ろうとしているところである。

 当時の身売りでは、父や兄、おじ、夫など、女の保護者(または父兄)の立場であれば、女を妓楼に売る権限があった。そのため、男は女の兄と称しているわけである。

 こうしたことが、人身売買が横行する背景にあった。

 左の、煙管を持った男が楼主である。金額を提示した楼主に対し、男はこう言う――

「もちっと買ってもよさそうなものだが、いい、しょうことがねえ、それで証文を決めてくんなせえ」

 もっと出してほしいところだが、その金額で手を打つので、証文を作成して、取り交わしましょう、と。

 楼主の右の、手に紙を持っている男は女衒(ぜげん)である。

 連載の第2回「吉原繁栄の裏で「身売り」された貧困家庭の娘たち」でも述べたが、身売りは表向きは年季と給金を取り決めた奉公なので、必ず証文を取り交わす。証文の作成には女衒の専門知識が必要だった。そのため、女衒は妓楼に呼ばれてきたのである。

 楼主に女の鑑定を求められ、女衒はこう述べる――

「この女中かえ。珍しい、いい玉だ。そして、小前で、大指は反るし、まず、なたまめ、からたちの気遣いもなし。言い分のええ玉だ」

 女中は奉公人の意味と、女性一般を意味する場合があった。ここは、後者である。女衒の評価は現代人には分かりにくいが、要するに、

 持病がある様子はなく、健康

 陰部は、しまりのよい名器

 ということ。つまり、上物と見立てていることになろう。

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永井 義男

ながい よしお

小説家、江戸文化評論家。1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、図説吉原事典(朝日新聞出版)、江戸の性語辞典(朝日新聞出版)など。


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