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「室町時代はまさに新自由主義」
お金の流れから見える織田信長の“本当の業績”とは?

インタビュー/『経済で読み解く 織田信長』著者・上念司

――例によって、織田信長は最終章近くに颯爽(さっそう)と登場。少ない出番のなかで先駆者たちを一刀両断で切り裂いていて、さすがに格好いいのですが、この登場の仕方は予定通りだったのですか?

上念:これについては、かなり「執筆の神」が降りてきた感じがしていますね。本書では第4部に当たるのですが、畿内・阿波国の戦国大名三好長慶がいいとこまで行くのですが、「果たしてこれからどうなるでしょう!?」というところで織田信長が颯爽と登場するわけですからね。
しかもこの本では、通常の信長本では必ず描写される桶狭間(おけはざま)の戦いも、姉川の戦いもないし、石山本願寺包囲戦の詳細も一切書いていないんですね。今までの信長本では描かれていなかった側面を描き出し、しかも自分で言うのもなんですが、こんなに面白く描くことができたというのは、私自身信じられないところがあります。たぶん最後は「信長の霊」が降りてきたんでしょうね。

――「経済で読み解く」シリーズは、大東亜戦争、明治維新、織田信長と続きましたが、次はどこに行くのでしょう?

上念:今回ご教示いただいた倉山先生は「次は豊臣秀吉にいったらいいんじゃない」と言っていましたね。秀吉をテーマにすると必然的に織田信長のことを書かざるを得ないでしょ、というわけです(笑)。さらにその次の本で家康について書けばたぶん秀吉のことを書くことになると思うので…ということなんですが、まだ今は決めていないです。
海外の事象に行ってもいいかなと思ったんですけど、やっぱり日本史のほうがいいかもしれませんね。
実は今回の本で書き漏らした人がいるんです。その人は京都五山の東班衆(とうばんしゅう)の僧侶なんです。その僧侶の生き方を通じて時代を描写するというのもアリかなとちょっと思っています。今回のようにマニアックな文献資料を追っていって、それこそ歴史小説風に中世の資本主義入門みたいな本にするのも面白いかなと思いますね。

――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

上念:歴史の歪曲というのは右でも左でも常に行われています。今でも右を自称している人のなかでも「新自由主義が〜」とか言ってバカ騒ぎをしている人、TPP亡国論とかなんとか言っている経済ド素人のみなさんがいらっしゃいますね。
悲しいことに、彼らは歴史を知らないんですよ。だって、彼らの言うところの定義に従うなら室町時代なんてまさに新自由主義ですよ。権力(寺社勢力)と商人ががっちり結びつき、商人は権力者をサポートし、権力者は商人を庇護(ひご)するという関係ですよね。室町時代の経済はそういう関係で運営されていったわけです。
そして、それぞれが縄張りを持っていた。しかも場合によっては武力衝突によって経済的な問題を解決しちゃうというかなり荒っぽい初期資本主義みたいなことをも行われていたわけです。そのなかで経済は発展していって、江戸時代の高度成長が起こる。

 

これは彼らの言うところの「新自由主義が〜」ってヤツですよね。しかも室町時代の日本は外資しかなかった。室町時代には、通貨は発行していなかったわけですから。全部外資です。もちろん日本に輸入された通貨ではありますけど、いわゆる外資ですよね。
そういう意味で言うと保守を自称している連中(私は、こんなのは保守ではないと思いますけど)のなかでもおかしな歴史歪曲が行われているというのは非常に嘆かわしいですね。ただ、ありがたいことに、そういう人たちの人数は確実に減ってきてはいると思いますが。

本書を読んで正しい歴史に目覚める人がどんどん増えていって欲しいですね。そうなれば、戦後日本を覆っていた「ディズニーランドの魔法」から解き放たれて、信長が活躍した時代のような、本来の生き生きとした力強い日本に立ち返るのではないかと私は思っています。

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上念 司

じょうねん つかさ

経済評論家。1969年、東京都生まれ。

 中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。

2007年、経済評論家・勝間和代と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。

2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一教授に師事し、薫陶を受ける。

 金融、財政、外交、防衛問題に精通し、積極的な評論、著述活動を展開している。

 著書に、『≪完全版≫「日本ダメ論」のウソ』(イースト・プレス)、『TOEICじゃない、必要なのは経済常識を身につけることだ! 』(ワック)、『デフレと円高の何が「悪」か』(光文社)他多数。


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