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デカルトを学ぶと、オレオレ詐欺にだまされない

齋藤孝さんの新刊『使う哲学』より、日常で使える哲学の思考法を伝授します。

ルネ・デカルト(1596〜1650)。フランス生まれの哲学者、数学者。「大陸合理論」を説き、近代哲学の祖として知られる。

 フランスの哲学者、ルネ・デカルト(1596年〜1650年)は物事や対象を盲信しないで、丁寧に実験しながら、信用できるか信用できないか、振り分けていくことを提唱しています。

 「我思う、ゆえに我あり」(ラテン語では「コギト・エルゴ・スム」)はデカルトの有名な言葉で、この言葉を知っている人は多いのですが、デカルトの思考法を身につけている人はといえば、ほとんどいないと思います。それどころか、身につけようとか、身につけるという発想を持ったことのある人もほとんどいないのではないでしょうか。

 高校の倫理や倫理・社会で、デカルトの「我思う、ゆえに我あり」と彼の著作に『方法序説』があることを習っても、その知識を得ておしまい。これでは、デカルトの哲学を学んだことにはなりません。

 デカルトの思想の詳細は後述しますが、デカルトの思想をしっかり学んだ人であれば、たとえばオレオレ詐欺に引っかかることはありません。認知症などになってしまったのであれば別ですが、高齢になっても、デカルト的な思考法を持っていれば、オレオレ詐欺にだまされることはないと言いきれます。なぜなら、盲信しないで確認することが、デカルトの思考法では当たり前だからです。

 久しぶりに息子から電話がかかってきたとします。「母さん、俺だよ。久しぶりだなぁ、元気にしてる? 実は俺さ、会社のお金が入ったバッグを電車の中に置き忘れてしまったんだ。300万円なんだけど、上司から弁償しろって言われてるんだ。でも、俺の安月給で弁償できるわけないよ。母さん、なんとかならないかな。助けてくれよ」。こんな内容だったとします。

 息子を助けたい一心で、「よし、わかった。振り込んであげるよ」となると、相手の術中にはまってしまうことになりかねません。

 息子を助けるにしても、相手の言葉を盲信はしないで、一度、電話を切ってかけ直すこともできます。久しぶりに電話をかけてきて、「300万円くれ」というのは、少なくとも尋常な状況ではないのですから。かけ直してみたら、本当の息子は驚きつつ、「それは詐欺だよ」と言うでしょう。

 こうした検証の手続きを踏むことは、デカルト的な思考だし、近代哲学を経た現代人としては当たり前の対応といえます。

 

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齋藤 孝

さいとう たかし

明治大学文学部教授。



1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士を経て、現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。



250万部を超えるヒットとなった『声に出して読みたい日本語』シリーズ(草思社)のほか、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『大人の精神力』、『10歳までに身につけたい「座る力」』(いずれも小社刊)など著書多数。


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