■しょぼくても、自分らしく「地に足のついた」生活が未来を拓く

 これらの店舗は、いずれも若い店長が札幌近郊で、2019年の1年間で急速に展開した。
 なぜ、若者は「札幌での店舗起業」に惹かれるのか。ほぼ全ての店舗の立ち上げに関わる"不謹慎マン"とは何者なのか。"不謹慎マン"こと、今井遼太郎さんに話を聞いた。 

 不謹慎マンこと今井遼太郎さん。

──まずは自己紹介をお願いします。 

 北海道大学農学院修士課程1年の"不謹慎マン"こと今井遼太郎です。1994年生まれの25歳。京都出身で、大学進学を機に札幌に来ました。大学は農業経済・農業労働市場について研究しています。実際に農家でアルバイトとして、野菜の収穫や田植えを自ら行ってきました。 
 

──大学院生ながら、実店舗を経営するに至った経緯を教えてください。 

 元々学部卒で就活をしており、大手メーカーから内定もいただいていたのですが、札幌が好きで、どこに配属か選べないというのが嫌でした。人から命令されるのが苦手という性質もありました。 
 最初の店舗は大学4年生の6月に始めました。『しょぼい起業で生きていく』の前身となったえらいてんちょうさんのブログを読んで、イベントバー「エデン札幌」という店を出しました。

 日替わりで色んな方にバーイベントをやってもらうという形態です。東京でできたエデングループのフランチャイズとして出発しました。これが当たり、あまり労働時間をかけずに、アルバイトの他に月30万ほど収入を得ることができるようになりました。 
 時間的・金銭的余裕ができたことで、元々やりたかった研究を継続ができると思い、大学院に進学することができました。 
 

──その後、店舗網を拡大していった経緯や狙いを教えてください。

  「エデン」には色んなお客さんがいまして、フリーターや仕事をやめた人とお話をするなかで、店舗をやろうという話が出てきました。1店舗の開業に50万円もかからないので、「エデン」の余剰金で初期費用を賄うことができたのです。 
 札幌には地の利があり、どこの場所ならどういう業態が流行るか、なんとなくわかっていました。人がいて、お金があって、それぞれの人に向いた商材がマッチすればお金を出す、その繰り返しで気付けば10店舗ほどになりました。 

 札幌は賃金が安く、ハードな居酒屋でも時給850円くらいしか貰えません。時給がいい仕事といえば、精神が摩耗するコールセンターくらいなものです。それなら、自分で店をやったほうがいい。家賃を含めた物価が安いので、札幌で月30万円稼げればかなり余裕をもった生活ができる。 
 店舗起業のノウハウがあるので、フラフラしている若い人に「一緒に儲けていこうよ」と気軽に誘っています。 
 

──人手不足が叫ばれるなか、店長はどのようにして集まるのでしょうか。 

 店長はみな、ツイッター経由で知り合いました。コミュニケーションのベースがツイッターなのです。人手不足といっても、若者は働きたくないわけではありません。拘束時間が長く、理不尽な要求をされる割に賃金がもらえない仕事を忌避しているに過ぎないのです。 
 私が展開する店舗では、基本的に店の全権を店長にお任せして、好きなようにやってもらうことを大事にしています。

 「基本給20万円、11:00-14:00・17:00-21:00勤務のカレー屋の従業員」に応募する人は少ないですが、「売れた分だけ収入になる、店舗を自由にデザインできる店舗責任者」に魅力を感じる若者は多いのです。
 大事なのは、自由度と「管理しないこと」です。だから、出資しているとはいえ過度なマニュアル化はせずに空白をつくることを大事にしています。
 所詮出しているのは最大で50万円ほどなので、帰ってきたらラッキー程度に考えています。 

 

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