日本全国に数多ある名字に高校生の時から興味を持ち、研究を始めた高信幸男さん。自身が全国を行脚し出会ってきた珍名とそれにまつわるエピソードを紹介する。

■位の高い者から賜ったことや、自らの職業を名字に

 3月は、4月からの新生活に向けて引越しが多くなる時期である。引越し業者も1年の中で最も忙しい時期である。引越しと言えば、新築のマイホームに移るのが誰もの夢である。その家も、昔ながらの和風の家や近代的なマンションと様々であるが、新築の家に住みたい気持ちは皆同じである。

 名字には建物に関するものも多い。その理由は、建物(城・宮・居宅等)を建築するために様々な職業の人が関わっており、それらの人達が仕事に関ったことで恩賞として位の高い者から賜ったことや、自ら自分の職業を名字にしたことが考えられる。

 

 たとえば、大工さんであれば大工(だいく)という名字に、畳屋さんであれば畳(たたみ)という名字になった。同じように、屋根(やね)・瓦(かわら)・天井(てんじょう)・床(ゆか)・柱(はしら)・壁(かべ)・戸(と)・障子(しょうじ)・部屋(へや)・押入(おしいれ・おしいり)・風呂(ふろ)・台所(だいどころ)・水道(すいどう)等もある。

 しかし、全てが建築の仕事とは限らず、風呂は源義経から賜ったものであり、障子は庄司・荘司という職業から生まれものと思われる。加えて、構造を表した木造(こづくり・きづくり)・瓦葺(かわらぶき)・平家(へいけ・ひらや)・二階(にかい)・三階(みかい)等の名字もある。三階以上がないのは、日本は昔から木造住宅であったため建てるには三階が限界であり、五重塔のような寺院建造物以外では四階以上の建物はなかったからと思われる。なお、木造という名字は、構造ではなく地名から生まれたものである。