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「新しい生活様式」における教育現場で「20人学級」は実現へ向かうのか

第30回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

20人学級

■分散登校での気づきを制度化する気運

 今年2月27日の第15回新型コロナウイルス感染症対策本部において、安倍晋三総理が全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、3月2日から春休みまで臨時休業を行うよう要請を行った。しかし、休校については教育委員会が判断するのが原則で、安倍首相が突如として要請したのは越権行為との議論もある。萩生田光一文科相が首相の意向を聞かされたのは当日で、これに最後まで反対したというが、聞き入れられなかったという。
 ともあれ、首相の要請を受ける形で、全国の学校は「全国一斉休校」に突入していった(一部では休校を見合わせたところもあった)。それは春休みが終わっても、ほとんどの学校で継続された。ようやく学校が再開に向けて動きだしたのは緊急事態宣言が39県で解除された5月14日以降(全面解除は5月25日)で、それも完全な再開ではなく、登校する子どもたちの数を制限する分散登校の形が採られた

 緊急事態感が漂う中での分散登校だったわけだが、そこには予期しなかった「気づき」があったという。前回も取り上げた通り、以前に比べて心にゆとりをもって子どもたちに接し、授業が行えたことに多くの教員たちは気がついた。同じく子どもたちも、落ち着いて学校生活に取り組むことができたのだ。

 その理由は、分散登校によっていつもとは違う少人数クラスが実現したからだ。

 子どもたちが少なければ、当然のことながら教員の目が行き届きやすくなる。教員の目が行き届けば、子どもたちの気持ちにも余裕が生まれる。それに気づけたのは、適切な表現ではないかもしれないが、新型コロナのおかげなのかもしれない。

 この気づきを新型コロナとともに終わらせるのではなく、日常のものにしようと提言を行ったのが『ゆとりある教育を求め全国の教育条件を調べる会』である。
 同会は、文科省に情報公開請求して手に入れた義務教育費国庫負担金に関する公文書のデータを読み取りながら、教職員定数や実数、配置の様子や学級編制の状況などを調査、研究している教育関係者を中心とするグループである。

 5月の初めに同会の事務局長を務めている山崎洋介氏が、「2019年度学校基本調査」をベースにして、少人数学級を実現するには、教員の数をどれくらい増やさなければならないかを試算して、発表している。その反響は大きく、野党やマスコミから問い合わせが殺到したという。
 その試算をさらに検討し修正が加えられた数字が、「提言」には盛り込まれている。「感染症対策とゆとりある豊かな教育のための少人数学級制の導入を」というタイトルがつけられている提言は、「はじめに」で次のように述べている。

「緊急的臨時的に実施した『分散登校』の経験から、少人数となった教室で学び、教えることの教育効果を改めて認識し、恒常的な少人数学級制度実施への期待の声がかつてなく高まっています」

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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