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“自主的な残業”を強いられる教員〜校舎の清掃は誰の役割なのか?〜

第28回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■補正予算案によって教育現場にもたらされるもの

 新型コロナウイルス(新型コロナ)に対応するための第2次補正予算案が、5月27日に閣議決定された。一般会計からの歳出総額は31兆9114億円で、1次補正予算(25,6兆円)を上まわっている。

 この中には、ウイルス感染防止策や子どもの学習保障の取り組みをすすめるための経費として、すべての小中学校や高校、特別支援学校などに1校あたり100万~300万円を支給する予算も含まれているおり、想定しているのは以下の用途だという。

 ●「消毒液や非接触型体温計などの保健衛生用品の購入
 ●集団での検温に必要なサーモグラフィーの購入
 ●家庭学習用教材の購入
 ●空き教室を使った授業に必要な備品の購入--など」
※『毎日新聞』2020年5月27日付)

 つまり、子どもたちの検温や消毒(=教室の掃除)に必要なものなどを購入する予算ということになる。では、実際に検温や清掃を行うのは誰か。業者に依頼するとなれば、そのための予算も必要になってくるはずである。しかし、そういう予算はつけないらしい。これらを行うのは教員なのだ。事実、教員による掃除が常態化している学校も少なくない。「清掃は教員が行うんだから消毒液代くらいは出そう」というのが、支給の趣旨と思われる。そこには、「教員がやるのは当然」といった意味合いも含まれていそうだ。

 教員が教室の清掃・消毒をするのは、はたして当然のことなのだろうか。残業時間が厚生労働省の定める「過労死ライン」(1ヶ月80時間)を超える教員が多いのは、授業以外の「雑務」のせいでもある。そして、清掃が雑務であることは間違いない。それが残業になってしまっていたら、さらに問題である。

 『給特法』(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の第6条では、「教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする」とされている。そして政令の基準とは、いわゆる「超勤4項目」と呼ばれているもので、内容は以下とされている。
 1、生徒の実習
 2、学校行事
 3、職員会議
 4、非常災害、児童生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合等

 上記に含まれていない教室の掃除を教員が強制され、それが残業になるようなものであれば、給特法に違反することになる。だからこそ、そうならないようになっている。

 どの学校でも校長が「命令」するのではなく、教員が「自主的」にやっているということになっているのだが、この「自主性」というのが魔法の言葉で、教員を過重労働に追い込んでしまう言葉にもなり得るのだ。また、過労死認定を争うときにも、この「自主的だったか否か」が争点となる。命令による過重労働なら過労死が認定されるが、自主的に行った業務であれば過労死として認められにくくなるからだ。

 だから、教員の仕事の多くは「自主的」にやったことが前提となる。遅くまで職員室に残ってやる仕事も、自宅に持ち帰ってやる仕事も…「やらなければならない仕事」のすべてが「自主的にやった仕事」になってしまうのが現状だ。校長や教頭が命令できない仕組みになっているからだ。給特法のために、教員の仕事は「自主的」が建前になってしまっているのである。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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