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【三橋貴明 緊急寄稿①】「国家が国民を守らない国」で、どう生き延びるか?

グローバリズムの猛威の中で衰退する日本


この6月に新刊『自民党の消滅』を上梓した、経世論研究所所長の三橋貴明氏が緊急寄稿。黒川検事長定年延長問題、河井前法相献金問題などに揺れ、危機的な状況にある自民党の行末を本書で考察し、日本の民主制についても鋭く言及した同氏が、コロナ危機を経て深刻化した日本のデフレーションについて解説し、巷にあふれる「自己責任論」について一考を投じる


■グローバリズムのトリニティが日本をぶっ壊す

 現在の世界は、日本を含め「第二次世界恐慌」の最中にあると理解しなければならない。

 第一次世界恐慌(一般には「世界大恐慌」)とは、1929年のアメリカNY株式大暴落という「バブル崩壊」と、フーバー政権の緊縮財政によるアメリカ経済「超」デフレ化、そしてその後の世界への伝播という一連の経済危機である。「超」デフレ化により、失業者が激増し、所得を失った国民が消費を減らし、需要が縮小していく。需要縮小を受け、企業は設備投資を「ゼロ」にまで絞り込み、経済の供給能力が削減されていく。最終的には、GDPが「数割減る」という破滅的な状況に至る。ちなみに、大恐慌期のアメリカのGDPは、ピーク(1929年)から44%(1933年)も減ってしまった。

 恐慌とは「超」デフレーション。つまりは、国民経済における「需要」が極端に減少する現象だ。需要が減れば、企業は製品・サービス価格を引き下げ、働き手の所得が減る。もしくは、失業して「所得消滅」となる。給料が減った人や、失業者は消費を抑制するため、さらに需要が減ってしまう。この悪循環が、延々と続くのが「恐慌」だ。

 恐慌から脱するためには、誰かが消費、投資という需要を拡大する必要がある。要は、おカネを使えという話だが、民間が恐慌やデフレ期に支出を拡大するのは困難だ。何しろ、所得が縮小、消滅していっている以上、民間は支出を絞り込むことが合理的になってしまう。そして、人々や企業が「合理的」に支出を減らしていくと、恐慌、デフレが悪化していく。いわゆる「合成の誤謬」だ。

 となると、非合理的に支出を拡大することが可能な主体が必要になるわけだが、まさにそれこそが「国家」なのである。

 さて、人類は歴史的に政策を巡り「二派」に分かれて政争を繰り広げてきた。右翼、左翼の対立ではない。

「国家の重要性を否定し、政府の機能をひたすら小さくすることを求めるグローバリズム」
 と、
「国家の重要性を肯定し、国民の経世済民実現のために政府を機能させようとするナショナリズム」
 の二派である。

 ちなみに、上記の争いについて「小さな政府 対 大きな政府」と表現する人がいるが、間違っている。正しくは「小さな政府 対 機能的な政府」である。

 ナショナリズムに基づき、国民が豊かに、安全に暮らせることを目指す「経世済民」の勢力は、政府の大小にはこだわらない。必要があれば、政府の機能を拡大し、必要があれば小さくすればいいと考えるのだ。つまりは、「機能的」。

 対するグローバリズムは、「常に」政府の機能を小さくすることを求める。具体的な政策は、政府の支出削減や増税により財政均衡を目指す「緊縮財政」、公共サービスの民営化や安全保障関連業の参入障壁を撤廃する「規制緩和」、そして国境を引き下げ、規制緩和を外資にも開放する「自由貿易」の三つだ。緊縮財政、規制緩和、自由貿易の三つは、必ず同時に進められるため、筆者はグローバリズムのトリニティ(三位一体)と呼んでいる。

 例えば、水道の民営化を例にとろう。緊縮財政により、地方自治体の財政が悪化。各自治体が水道サービスを維持不可能なところに「追い込み」、その上で水道民営化を推進。「水」という安全保障の肝となる財・サービス分野において、民間ビジネスの新規参入を促進し、企業や投資家などが儲かる環境を提供する。そしてその際に、もちろん外資制限は設けない。緊縮財政、規制緩和、自由貿易の合わせ技だ。

 あるいは、医療サービス。緊縮財政で、病院、医師・看護師、病床数を減らし、公的医療保険の適用を絞り込む。その上で、保険が適用できない自由診療の拡大という規制緩和も実施。さらには、外資制限がないため、やがて我が国に悪名高きアメリカの民間医療保険会社が雪崩れ込み、ぼろ儲けするというスキームだ。

 現在の与党である自民党は、元々は確かに「国民政党」ということで、ナショナリズム的な色が濃かった。とはいえ、日本の元祖「小さな政府主義者」であった大平正芳の内閣以降、中曽根内閣、橋下内閣、小泉内閣と、グローバリズムに染まった政権が各種の「改革」を強行。

 そして、日本におけるグローバリズムの完成者として成立したのが、第二次安倍政権なのである。

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KEYWORDS:

『自民党の消滅』
三橋貴明 著

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三橋 貴明

みつはし たかあき

経世論研究所

所長

1969年熊本県生まれ。経世論研究所所長。東京都立大学経済学部卒業。2007年、インターネットの公開データの詳細な分析によって、当時好調だった韓国経済の脆弱さを指摘し、大反響を呼ぶ。これが『本当はヤバイ! 韓国経済』(彩図社)として書籍化され、ベストセラーとなる。その後も話題作を発表し続けると同時に、雑誌への寄稿、各種メディアへの出演、全国各地での講演会などで注目を集めている。

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