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【分析】萩生田文科相の「教員・国家公務員」発言から見えるズレと狙い

第32回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

教員

■ようやく文科相は教員の過酷さに気がついたのか

 萩生田光一文科相による「教員免許は国が交付すべき」という旨の発言が注目されている。発端は、6月8日に都内ホテルで行われた内外情勢調査会の全国懇談会で、彼が「私見」として講演した内容だった。

 「教員は、あらかじめ年間4%の調整額を上乗せした地方公務員。一般の公務員は昇給試験などで給料が上がり、残業手当や休日手当も付くが、先生たちにはそれがない」と説明。そして、新型コロナウイルス感染症(※以後「新型コロナ」)による長期休校から再開した学校で、「土曜日に授業をやっても、休日手当が出るわけでもない。子どもたちの学びのために、夕方暗くなるまで補習をやってくれる先生がいても、残業手当もない。教員は大変な仕事だということが、今回すごくクローズアップされている」

 さらにこう続く。
「コロナ後のふんばりを全国の先生が見せてくれることがすごく大事だ。その上で、給与体系を含めた仕組みを変えていかなければいけないのではないか」

 つまり、教員を現在の地方公務員から国家公務員にすれば「給料は上がる」と言いたいのだろう。これは、ようやく文科相も教員の大変な実態に目を向けて理解を示し、教員に寄り添ったとも受け取れるような発言である。では、これで教員にとって明るい未来が開けていくのだろうか。楽観視するのは早すぎるかもしれない。

 言うまでもなく、4%の調整額だけで残業手当や休日手当がないのは、給特法があるからだ。その改正が昨年12月に行われたが、残業手当や休日手当を文科省は問題にしなかった。そして、4%の調整額だけでの「教員定額働かせ放題」を正当化してしまった。
 萩生田氏が文科相に就任したのは昨年9月であるから、給特法改正の時には大臣だった。「残業手当がない」ことを、いま問題にするのなら、なぜ給特法改正論議のときに問題にしなかったのか、と思ってしまう。もっとも、教員が大変な仕事であることが「今回クローズアップされている」と言っているくらいだから、改正論議当時は「大変な仕事」とは思っていなかったのかもしれない。
 もちろん、教員の大変さは新型コロナ以前からクローズアップされており、社会問題にまでなってきている。それを「今回」と発言するのは、認識不足といわれても仕方ないかもしれない。そうした大臣の認識を、新型コロナが変えたのだろうか。

 しかし、萩生田文科相が認識を新たにしたとしても、わざわざ教員を国家公務員にする必要があるのかどうかは疑問だ。残業手当が必要だと思うなら、再び給特法を改正するなり、いっそ廃止して残業代を支払う制度にすればいい。給料を上げたいのなら、1974年に「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」(人確法)をつくって給料の上乗せを実行したように、ストレートに上げればいい。事実「国家公務員になっても、必ずしも給料は上がらないはずです」と指摘する教員もいる。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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