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藤井聡京大教授「第二波に備え『8割自粛』を徹底検証すべし」【緊急反論③:自粛でなく水際対策の強化が感染を収束させた】

集中連載「第二波に備え「8割自粛」を徹底検証すべし」

2020年6月10日の国会 衆院予算委員会での様子(写真:つのだよしお/アフロ)

■(1)「8割自粛要請の有効性の有無」よりも「なぜ、感染が収束に向かったのか?」についての分析の方が圧倒的に重要

 筆者は、5月21日に『【正式の回答を要請します】わたしは、西浦・尾身氏らによる「GW空けの緊急事態延長」支持は「大罪」であると考えます。』https://38news.jp/economy/15951)という「藤井個人」の「考え」(見解)を配信しました。

 これについて、ネット上でご専門の先生方も含めて、賛否両論の議論が展開されたのを拝見し、改めて筆者の見解をより詳しく解説する主旨で、この緊急連載『第二波に備え「8割自粛」を徹底検証すべし』を開始したという次第です。

 そしてその初回原稿では、「8割自粛要請というものは「極めて深刻な副作用がある劇薬」である一方、その有効性を否定するデータがGW頃には出ていたにも関わらず、なぜ、それを公表せずに、むしろその劇薬の使用継続を専門家として主張したのでしょうか。そのせいで、我々の経済はボロボロになっているのですが・・・」という、いわば「患者から医師への申し立てだ」というのが今回の主旨であることを解説しました。
https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/526126/

 そして、「第二波」がやってきた時には、「感染抑止効果が限定的だが、深刻な副作用だけは確実にもたらされる様な対策」には、慎重に判断することが必要だとお話ししました。

 そして緊急連載第二弾では、今回の議論の肝となる、「8割自粛『要請』の有効性」について、改めて統計的に検証しました。この連載のために新たに統計分析を行いましたが、やはり、当初から申し上げていた通り、8割自粛要請の有効性が、否定される結果となりました。
https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/540836/

 しかし、感染は確かに抑止され、3月下旬から収束に向かっていったのは事実です。

 では一体なぜ、そんな風にして日本の感染は収束していったのでしょうか? この点を明らかにすることこそ、これからやってくる第二波対策にとって、極めて重要な知見となるでしょう。

 緊急連載第3回目の今回は、まさにこの点について考えたいと思います。

次のページ(2)新規感染者数のピークは3月下旬だが、「感染者の増加率」のピークは3月上旬だった

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藤井 聡

ふじい さとし

1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授(都市社会工学専攻)。京都大学工学部卒、同大学院修了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科研究員、東京工業大学助教授、教授等を経て、2009年より現職。また、11年より京都大学レジリエンス実践ユニット長、12年より18年まで安倍内閣・内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)、18年よりカールスタッド大学客員教授、ならびに『表現者クライテリオン』編集長。文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。専門は公共政策論。著書に『経済レジリエンス宣言』(日本評論社)、『国民所得を80万円増やす経済政策』『「10%消費税」が日本経済を破壊する』『〈凡庸〉という悪魔』(共に晶文社)、『プラグマティズムの作法』(技術評論社)、『社会的ジレンマの処方箋』(ナカニシヤ出版)、『大衆社会の処方箋』『国土学』(共に北樹出版)、『令和日本・再生計画』(小学館新書)、MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実(晶文社)など多数。

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  • 2019.10.28