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藤井聡京大教授「第二波に備え『8割自粛』を徹底検証すべし」【緊急反論①】

「専門家」に対する藤井批判は「患者から医師に対する疑義申し立て」である

2020年5月31日、緊急事態宣言が解除された銀座の光景。人出も戻りつつある(写真:つのだよしお/アフロ)

🔳(1)第一波の遙か前から「先出し」の形で展開してきた「過剰自粛」批判

 筆者は、5月21日に『【正式の回答を要請します】わたしは、西浦・尾身氏らによる「GW空けの緊急事態延長」支持は「大罪」であると考えます。』(https://38news.jp/economy/15951という「藤井個人」の「考え」(見解)を配信しました。

 この記事については賛成反対を含めて、実に多くの意見が様々に寄せられております。ただし、「命を救ってくれたお医師を批判する」ということ自体が少々常識的ではないという点から、かなりの批判があることは十分想定されるところ、むしろ予想以上に「賛同」の声を多く寄せられたことに少々驚きを感じたくらいでした。

 特に一定収束した今になって批判し出すのは「後出しじゃんけん」だとの批判も多くあろうと思い、そうした「後出し」議論とは一線を画すものとの趣旨を冒頭に明記していたのですが、それでもなおそうした批判が多くあったことにも少々驚きを感じた次第です。おそらく、「大罪」というショッキングな言葉を使ったタイトルの雰囲気だけでそう判断している方も多いのかも知れません。ですがそもそも筆者は、第一波が本格化する遙か以前の3月3日の時点で、「過剰自粛という集団ヒステリー」https://38news.jp/economy/15456という記事を公表したり、「コロナを「過剰」に恐れてはならない」https://www.youtube.com/watch?v=qYvoBBFLLAo)というラジオ番組(収録3月23日)で各国が過剰反応のパニック状況にあるという旨を発言する等、「考える前に兎に角自粛すべきである」という「抑圧的」な態度を厳しく批判し続けて参りました。

 

 無論、当時は未知なことも多く、確率論だけで議論する等稚拙な側面があったことは決して否定致しませんが、「過剰」な自粛を回避し、可能な限り入手できる情報の範囲で是々非々の判断すべきである、という当方の基本的な主張は今に至るまで一貫したものと考えています。西浦氏等の感染症専門家も一定のリスクを背負って国民のために発言されてきた姿勢に敬意を表するものではありますが、当方もまた、正反対の論調ながらも同様に一人の学者としてリスクを背負って(後出しというよりむしろ)「先出し」の格好で「過剰自粛批判」を一貫して3月上旬から展開して参ったものと考えています。

🔳(2)今後の適正な感染症対策のために、しっかりとした事後評価の議論が必要です

 さて、この「連載」原稿は、こうした筆者の「自粛」に関する西浦・尾身氏に対する批判に関わる議論をさらに深めるために始めさせていただいたものです。

 連載を始めるにあたり、改めて自己紹介を致しておきたいと思います。

 筆者は、安倍内閣で内閣官房参与をつとめ、経済学や国土政策、防災学などの知見からアドヴァイスをして参りましたが、それ以前から、パンデミックに関わるリスク・マネジメントや環境衛生学もサブ領域に含める都市計画、感染症の分野でも最近特にメディアでも見られる様になった行動変容を中心とした心理学・行動科学の研究に20年以上従事してきた者です。
京都大学 都市社会工学専攻 藤井研究室
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/member/fujii/academic

 一方、京都大学のウイルス学者らと一緒にパンデミックを含めた様々なリスクに対する対策を考える京都大学レジリエンス実践ユニット長も仰せつかっており、これまで、感染症についての提案書や論文を、様々な分野の先生方と一緒に複数公表して参りました。
【提案書等】http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/resilience/event.html
【論文等】http://j-strategy.com/opinion2/4754,
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/resilience/documents/coronaproposal_policyandpractice.pdf

 また、西浦氏がご専門の数理モデル研究や、(再生産数の推計などにも活用されている)数理・計量分析ついてはかれこれ30年ほど従事し、数百本以上の関連論文を出版して参っております。

 以上の様に自己紹介さし上げたのは、筆者は感染症そのものを「直接」専門とする研究者ではないものの、パンデミックについての関連諸分野、とりわけ、その政策論のためのリスク・マネジメントに関する研究者であり、完全なる部外者的研究者なのではないということを申し上げておくことが必要だと考えたからです。

 さて、そうした筆者が、西浦氏、尾身氏の「科学者としての振る舞い」に関して、主として、倫理的な側面から批判を展開し、かつ、両名に直接メールを送付さし上げてお返事をお待ちしておりますと申し上げたのですが、未だ残念ながら回答はいただけていません。

 そんな中、感染症専門医の第一人者であられる岩田健太郎氏がこちらの『BEST TiME』さんに当方の記事についての「批判記事」を「連載」で始められたのを、たまたま拝見いたしました。

 岩田健太郎医師「感染爆発を押さえた西浦博先生の『本当の貢献』とは」【緊急連載①】https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/517429/

岩田健太郎医師「日本で感染爆発が押さえられた要因とはなんだったのか」【緊急連載②】https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/518809/

 岩田健太郎医師「感染対策も分析も西浦先生だけに『依存』してはいけない」【緊急連載③】https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/520357/

岩田健太郎医師「科学は検証を経て、真実に少しずつ近づいていく」【緊急連載④最終回】https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/521889/

 筆者は「第二波」が来るまでに、これまでの対策についての事後検証をしっかり行い、今後の対策についての議論を「活性化」「適正化」することを目的として、本批判記事を配信しましたので、こうした岩田氏の批判連載は、さらに議論を深めることが可能となる契機となりますことから、大いに有り難く感じています。

 

次のページ(3)緊急事態宣言は、「2週間」のタイムラグ(時間遅れ)後の新規感染者数を減らすために出される

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藤井 聡

ふじい さとし

1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授(都市社会工学専攻)。京都大学工学部卒、同大学院修了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科研究員、東京工業大学助教授、教授等を経て、2009年より現職。また、11年より京都大学レジリエンス実践ユニット長、12年より18年まで安倍内閣・内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)、18年よりカールスタッド大学客員教授、ならびに『表現者クライテリオン』編集長。文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。専門は公共政策論。著書に『経済レジリエンス宣言』(日本評論社)、『国民所得を80万円増やす経済政策』『「10%消費税」が日本経済を破壊する』『〈凡庸〉という悪魔』(共に晶文社)、『プラグマティズムの作法』(技術評論社)、『社会的ジレンマの処方箋』(ナカニシヤ出版)、『大衆社会の処方箋』『国土学』(共に北樹出版)、『令和日本・再生計画』(小学館新書)、MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実(晶文社)など多数。

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