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藤井聡京大教授「8割自粛」で感染が減ったという明確な統計学的証拠はない【緊急反論②】

集中連載「第二波に備え「8割自粛」を徹底検証すべし」

2020年6月4日、新型コロナウイルス流行による緊急事態宣言が解除された夜の街。自粛が噓だったかのような人出の多さだった(写真:西村尚己/アフロ)

◾️(1)「緊急事態宣言」の効果はあったのか?

 筆者は、5月21日に『【正式の回答を要請します】わたしは、西浦・尾身氏らによる「GW空けの緊急事態延長」支持は「大罪」であると考えます。』https://38news.jp/economy/15951という「藤井個人」の「考え」(見解)を配信(また、その内容を西浦氏、尾身氏に送り状を付けて直接送付)しました。

 当方の指摘の概要は、次のようなものとなります。

 「・そもそも緊急事態宣言は経済に極めて深刻なダメージをもたらす。・にも関わらず、緊急事態宣言をやってみたところ、(西浦氏が5月12日に公表したデータを見る限り)それによる効果は明確に見いだせなかった。
 ・そのことはGW明けには分かっていた筈で、それにも拘わらず、政府の緊急事態宣言を西浦氏や尾身氏は積極的に支持した。これは科学者倫理の視点から許されざるものである」

 この筆者の指摘の中でも特に「緊急事態宣言の効果は明確に見いだせなかった」という点について「反論」される方がおられました。その代表的なご批判が、神戸大学の岩田健太郎氏のコチラの批判ですhttps://www.kk-bestsellers.com/articles/-/518809/

 しかし、結論から申し上げると(幸か不幸か)岩田氏の反論は筆者の論旨を論駁するものとは言い難いものでした。

 この問題は、一般の読者の方にお伝えするには、いくつかの前提の議論が必要となり、少々複雑なものとなりますが、できるだけ簡潔に、順をおってお話ししつつ、「ホントに8割自粛に効果があったのかどうか?」という点を改めて掘り下げて論じたいと思います。

◾️(2)「副作用がある薬剤」の場合、「効果が明確に立証されること」が必要である

 まず、この話を進める前に、当たり前の事実を一点確認しておきたいと思います。

 そもそも「8割自粛」という取り組みは凄まじい副作用があるものです。経済活動が大いに抑止され、サービス産業を中心に凄まじい減収を導き、倒産、失業を拡大させます。したがってそれは、仮に効果があるとしても「激しい副作用がある薬剤」と同様のものなのです。

 そうした「副作用がある薬剤」の使用が許されるのは、「効果が明確な場合」に限られます。前回も指摘しましたが、万一効果が曖昧なら、単に患者を傷付けるだけに終わるからです。だから、その使用にあたっては、使用する側が「その効果を立証する責務」を負っているのです。

 つまり、この「8割自粛」の効果の存在についての立証責任は、その使用を強制される側(筆者を含めた国民)ではなく、その使用を強要する側(専門家)にあるのです。

◾️(3)多くの国民は今、「8割自粛を軽々に言い続ける専門家」に「疑いの目」を向けている

 この話をさらに分かり易く言うと、「8割自粛要請」というものは、国民側からしてみればそれによって自分達の社会も経済もボロボロになることはわかりきっているが、専門家側がそれがどうしても必要だと言うなら致し方無いから従いましょう・・・という話なわけで、効果については多分あると思うけれど無いかもしれない・・・という程度の話なら(つまり、その効果が立証されていないものなら)、8割自粛など願い下げだと考えるのは当たり前の話なのです(おそらく、このあたりが、本件についての「専門家」と「国民」(すなわち筆者)との間の意識のズレなのだろうと思います)。

 もちろん今、多くの国民が専門家会議の事を信頼してはいることは間違いありません。

 しかしその一方で、度重なる自粛要請で経済が疲弊し、所得を失い、仕事を失っている国民もどんどん増えています。その結果今、8割自粛によって苦しめられた多くの国民が「軽々に8割自粛を言い続けている専門家に深い猜疑(疑い)の目を差し向けている」のも事実なのです。

 しかし、(しばしば「コロナ脳」とも言われる様な)「自粛警察」がはびこるほどに自粛を強要するこわばった空気が支配する日本では、自粛を主張する専門家に疑義を呈することが難しくなっています。専門家会議の人達を少しでも批難すれば、バッシングされるような空気があるからです(緊急事態宣言が解かれた今、少々緩和していますが)。

 ついては筆者の専門家の皆さんへの疑義申し立ては、「口には出しにくい、真の国民の声」を代弁している側面がある、と筆者は考えています(例えば、当方のツイッターに対するコメントなども、ご参照下さい。以上に筆者が説明した感情をお持ちの多くの国民がおられることを、お分かり頂けると思います)。https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1268840465077395458

◾️(4)8割自粛の効果は、その前後で何かが変わったかで調べる以外に方法はない

 さて、「薬剤の効果」はどうやって立証するかというと、最もオーソドックスな方法は、その薬剤を供与するグループとしないグループを設けて、その薬剤を投与してみて両者の回復具合の差を比べるという方法が一般的ですが、「8割自粛」の場合には、そうした厳密な実験は無理です。

 できることと言えば、「8割自粛した前後で、何か変化があるか?」を調べることしか出来ません。

 そこで(良い方向への)変化があれば、「効果有り」と言えるでしょうし、変化がなければ、「効果があるとは言えない」という結論を導く他ありません。

 そしてこの点の検証を可能とするデータを、まさに当のご本人であられる西浦氏が5月12日に公表しているのです。

 それが、このグラフなのですが、このグラフを使って、8割自粛にどういう効果があったのかを、改めて確認していきましょう。

次のページ(5)「8割自粛」の最大の「狙い」は感染爆発(オーバーシュート)を止める事だった。しかし、その目的の為には必要なかった事が事後的に分かった

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藤井 聡

ふじい さとし

1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授(都市社会工学専攻)。京都大学工学部卒、同大学院修了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科研究員、東京工業大学助教授、教授等を経て、2009年より現職。また、11年より京都大学レジリエンス実践ユニット長、12年より18年まで安倍内閣・内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)、18年よりカールスタッド大学客員教授、ならびに『表現者クライテリオン』編集長。文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。専門は公共政策論。著書に『経済レジリエンス宣言』(日本評論社)、『国民所得を80万円増やす経済政策』『「10%消費税」が日本経済を破壊する』『〈凡庸〉という悪魔』(共に晶文社)、『プラグマティズムの作法』(技術評論社)、『社会的ジレンマの処方箋』(ナカニシヤ出版)、『大衆社会の処方箋』『国土学』(共に北樹出版)、『令和日本・再生計画』(小学館新書)、MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実(晶文社)など多数。

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  • 聡, 藤井
  • 2019.10.28