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【三橋貴明 緊急寄稿①】「国家が国民を守らない国」で、どう生き延びるか?

グローバリズムの猛威の中で衰退する日本

■コロナ禍とデフレは自己責任論で対処できない

 ここで改めて、2012年末の第二次安倍政権発足以降、推進されてきた政策を分類してみよう。

1. 緊縮財政:プライマリーバランス黒字化目標、新規国債発行減額、消費税増税、公共投資や地方交付税交付金、科学技術予算や教育支出、防衛費、防災費、診療報酬、介護報酬削減、公共病院統廃合、病床の削減。国民の社会保障負担の引き上げ(高齢者の窓口負担引き上げなど)、ふるさと納税ワンストップ特例制度(第二次安倍政権以降に始まったわけではないが、市町村合併や「ふるさと納税」も、中央政府から地方への支出を節約する緊縮財政の一種になる)

2. 規制緩和:労働規制の緩和(派遣社員の拡大、高度プロフェッショナル制度〈残業代ゼロ制度〉等)、コーポレートガバナンス改革、混合診療(患者申し出療養)拡大、水道など公共サービスの民営化、グリホサートの安全基準引き上げ、種子法廃止、農協改革、農地法や農業委員会法の改訂、漁業法改訂、国家戦略特区、電力自由化、民泊や白タクの解禁、シェアリング・エコノミー推進、IR法(カジノ解禁)、法人税減税(「企業への徴税という規制の緩和」という意味で、規制緩和の一部を成す)

3. 自由貿易:TPPや日米FTA、日欧EPAなどの自由貿易協定、出入国管理法改訂による移民受け入れ拡大、観光業のインバウンド(外国人観光客)依存推進のためのビザ緩和、外国人の土地購入推進

 改めて列挙すると、安倍政権下で実に多種多様なグローバリズムの政策が進められたことが理解でき、愕然とする。まさに「国家破壊」だ。あるいは、政府の機能をひたすら小さくする「国家の店じまい」である。

 現在の自民党路線が続く限り、我が国ではひたすらグローバリズムのトリニティが繰り返され、政府の機能は最小化されていく。結果的に、非常事態発生時、いや平時においても「国家が国民を守らない」国へと落ちぶれることになる。

 それにも関わらず、国民の多くは冷戦時代の遺物である「右だ、左だ」のくだらない争いに気を取られ、裏で安倍政権が国家の機能を削減していっていることに気が付かない。あるいは「問題」として認識していない。

 それどころか、国民自ら「自己責任」というおぞましい言葉を礼賛しているわけだから、呆れ返るしかない。自己責任とは、政治の放棄そのものだ。自己責任論がまかり通るならば、国家はいらない。

 コロナ禍で所得を失った国民が貧窮する、地方が衰退する、企業が倒産する。これらは「自己責任」なのか。絶対に違う。

 コロナ禍という疫病と、恐慌という二つの災厄に襲われた我が国は、早急に政治を「ナショナリズム(あるいは、反・グローバリズム)」へと転換しなければならない。緊縮財政、規制緩和、自由貿易というトリニティを、今からでも「真逆」へと転換するのだ。

 さもなければ、我が国はこのままグローバリズムの猛威の中で衰退し、将来的には、
「かつて経済大国と呼ばれた、アジアの劣等国」
 へと落ちぶれていくことになるだろう。

 

KEYWORDS:

『自民党の消滅』
三橋貴明 著

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三橋 貴明

みつはし たかあき

経世論研究所

所長

1969年熊本県生まれ。経世論研究所所長。東京都立大学経済学部卒業。2007年、インターネットの公開データの詳細な分析によって、当時好調だった韓国経済の脆弱さを指摘し、大反響を呼ぶ。これが『本当はヤバイ! 韓国経済』(彩図社)として書籍化され、ベストセラーとなる。その後も話題作を発表し続けると同時に、雑誌への寄稿、各種メディアへの出演、全国各地での講演会などで注目を集めている。

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