僕の家には犬がいる【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第13回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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僕の家には犬がいる【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第13回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第13回

 

【久しぶりのゲスト】

 

 4年振りに編集者が訪ねてきた。奥様(あえて敬称)も一緒にレストランで食事でも、と誘われたが、その日はちょうど長女が出かける日だったので、犬たちを留守番させるわけにはいかず辞退した。結局、編集者が持ってきてくれた料理を、庭園を眺めながらピクニック気分で一緒に食べた。ただ、仕事の話はしていない。仕事関係はメールで充分なので、会って話す必要がない。まあ、でも、たまに人の顔を見るのも悪くはないかも。

 ここ数日は、ゲラを見る仕事をしている。引退しているはずなのだが、まだこのように仕事が残っている状況は、わざと不適切な形容用いるなら、「後ろ髪を引かれながらの労働」とでも表現するのだろうか。どうか、悪しからず。

 

僕が担当している大きなシェルティは、先日6歳になった。「大きいけれど赤ちゃん」と呼ばれていたが、もう赤ちゃんではない。たいてい階段の踊り場にいて、窓から外を見張っている。

 

文:森博嗣

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✴︎森博嗣 新刊『静かに生きて考える』発売忽ち重版!✴︎

 

 

森博嗣先生のBEST T!MES連載「静かに生きて考える」が書籍化され、2024年1月17日に発売決定。第1回〜第35回までの原稿(2022.4〜2023.9配信、現在非公開)に、新たに第36回〜第40回の非公開原稿が加わります。どうぞご期待ください!

 

 

 世の中はますます騒々しく、人々はいっそう浮き足立ってきた・・・そんなやかましい時代を、静かに生きるにはどうすればいいのか? 人生を幸せに生きるとはどういうことか?

 森博嗣先生が自身の日常を観察し、思索しつづけた極上のエッセィ。「書くこと・作ること・生きること」の本質を綴り、不可解な時代を見極める智恵を指南。他者と競わず戦わず、孤独と自由を楽しむヒントに溢れた書です。

 〈無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状況といえるだろう。人間は何故生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものなのだから、辻褄が合っている。〉(第5回「五月が一番夏らしい季節」より)。

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森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

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