「統一教会問題」と「ホスト問題」の共通点 〝キモイもの〟を感情的に例外扱いしていいのか?【仲正昌樹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「統一教会問題」と「ホスト問題」の共通点 〝キモイもの〟を感情的に例外扱いしていいのか?【仲正昌樹】

 

 ヌスバウムは、ピルグリム・ファーザーズの時代以来のアメリカの歴史における宗教迫害の問題を論じた『良心の自由』(二〇〇八)では、宗教迫害を逃れて新天地にやってきた人たちが、自分たちが様々な苦労を経てメジャーになったと思い始めると、次第に排他的になり、自分たちと異なる教えやそれに基づく習慣を持った人たちに嫌悪感を覚え、いろいろな理由を付けて迫害するようになるということが繰り返されたことを強調している。白人のメインストリームの宗派が、ネイティヴ・アメリカンやカリブ海の住民の宗教を、自分たちのそれと対等とはなかなか認めようとしなかったこと、一九世紀の後半に、カトリック系移民が増えた時、彼らを影で操るローマ法王庁の陰謀説に踊らされたこと、学校教育の現場でのエホバの証人やモルモン教の生徒の振る舞いに過剰反応することなど。

 こうした態度は、彼らの嫌悪感=恥辱に起因するものと見ることができる。かつての自分たちのように脆弱で、非理性的に振る舞っているように見える存在に耐えられないのである。因みに、私は最近、プロテスタントの牧師たちの前で講演する機会があったので、この『良心の自由』を引き合いに出して、あなたたちも同じようなことをしていないか、と示唆したところ、ちゃんと聞いてくれた人もいたが、落ち着いて話を聞いていられず、ざわざわしていた人たちもいる。

 「リベラル」であるという自負を持つ人は、自分が嫌悪感に動かされて、いろんな例外を正当化していないか、自問すべきではないか。

 

文:仲正昌樹

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✳︎重版御礼✳︎

哲学者・仲正昌樹著

『人はなぜ「自由」から逃走するのか:エーリヒ・フロムとともに考える』(KKベストセラーズ)

「右と左が合流した世論が生み出され、それ以外の意見を非人間的なものとして排除しよ うとする風潮が生まれ、異論が言えなくなることこそが、
全体主義の前兆だ、と思う」(同書「はじめに」より)
ナチス ヒットラー 全体主義

 

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仲正 昌樹

なかまさ まさき

1963年、広島県生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学法学類教授。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。古典を最も分かりやすく読み解くことで定評がある。また、近年は『Pure Nation』(あごうさとし構成・演出)でドラマトゥルクを担当し、自ら役者を演じるなど、現代思想の芸術への応用の試みにも関わっている。最近の主な著書に、『現代哲学の最前線』『悪と全体主義——ハンナ・アーレントから考える』(NHK出版新書)、『ヘーゲルを超えるヘーゲル』『ハイデガー哲学入門——『存在と時間』を読む』(講談社現代新書)、『現代思想の名著30』(ちくま新書)、『マルクス入門講義』『ドゥルーズ+ガタリ〈アンチ・オイディプス〉入門講義』『ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義』(作品社)、『思想家ドラッカーを読む——リベラルと保守のあいだで』(NTT出版)ほか多数。

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