「これ以上は無理です」と言えないあなたへ伝えたい大切なお話【沼田和也】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「これ以上は無理です」と言えないあなたへ伝えたい大切なお話【沼田和也】

『牧師、閉鎖病棟に入る。』の牧師が語る優しい夜話

 

 相談者に応じる側の者として、相談者を一方的に分析するかのように語ってきた。だが、これは相手に対する分析であると同時に、自己分析でもある。

 というのも、わたし自身がかつて限界に達し、職場でキレて激昂し、自死しそうになった経験を持つからである。

「ほうれんそう」と言う。報告、連絡、相談である。わたしは出身地から遠く離れた地に妻と共に赴任し、牧師としてよりもむしろ、幼稚園の理事長兼園長としての日々に忙殺されていた。とはいえ、遠方の同僚や友人に、メールや電話などを用いて悩み相談をしようと思えばできた。当時すでにスカイプもあったので、顔を見ながら長時間雑談を楽しむこともあった。それでも、「しんどい」と相談することはなかった。というよりも、そこまで追いつめられているという自覚が、キレるその瞬間までなかったのである。キレた自分に驚いた。何に対してキレたのかが分からなかったし、キレた自分の大声にショックを受けた。

  数年前、国会議員をしていた女性が秘書に激昂して暴言を吐いたことがスキャンダルとなり、彼女は議員を辞職した。そういうスキャンダルは、さまざまな業種で起こっている。わたしは彼女を嗤うことができない。わたしだって、もしもキレた相手がわたしを赦さず、訴えていたとしたら、今の仕事に就くことはできなかったであろう。周りの人に赦されて、支えられた結果、今の仕事に就かせてもらっている。スキャンダルを起こした有名人がツイッターで激しくバッシングされる姿を見るにつけ思う。たしかにケースによっては、それは明確に被害者がいるのであって、法的な裁きも受けなければならないものである。だが、そのことと、その人自身がこの世界、この社会で存在してはいけないということとは話がちがう。過ちを犯した人にも、なにが過ちだったのか、その過ちを二度と繰り返さないためにはどのような生き方をしていけばよいのか、自分自身と対話する時間が与えられるべきである。

 

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沼田和也

ぬまた かずや

牧師

日本基督教団 牧師。1972年、兵庫県神戸市生まれ。高校を中退、引きこもる。その後、大検を経て受験浪人中、1995年、灘区にて阪神淡路大震災に遭遇。かろうじて入った大学も中退、再び引きこもるなどの紆余曲折を経た1998年、関西学院大学神学部に入学。2004年、同大学院神学研究科博士課程前期課程修了。そして伝道者の道へ。しかし2015年の初夏、職場でトラブルを起こし、精神科病院の閉鎖病棟に入院する。現在は東京都の小さな教会で再び牧師をしている。ツイッターは@numatakazuya)

 

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  • 沼田 和也
  • 2021.05.31