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「ジャニー喜多川告発騒動」に見る後出しじゃんけん的「ミートゥー」運動の悲哀【宝泉薫】

野党超党派のヒアリングに臨む元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト(右)と橋田康(2023年05月16日)

 

◾️「カウアン・オカモトの意外な素顔」と「ミートゥー運動」

 

 ジャニーズ事務所をめぐる騒動がくすぶっている。創業者のジャニー喜多川が長年にわたり、所属する少年アイドルたちにセクハラをしていたのでは、という疑惑をめぐる騒動だ。

 とはいえ、こうした騒動は過去にも繰り返されてきた。もっぱら、事務所をやめた元アイドルが暴露的な告発を行い、しばらくすると沈静化へという経緯をたどる。

 それはこの手の疑惑の真偽を確かめることがもともと困難だからだろう。まして、ジャニーは2019年に亡くなった。それゆえ、藤島ジュリー景子社長は5月14日に発表した公式見解のなかでこう語っている。

「当事者であるジャニー喜多川に確認できない中で、私どもの方から個別の告発内容について『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではなく、さらには憶測による誹謗中傷等の二次被害についても慎重に配慮しなければならないことから、この点につきましてはどうかご理解いただきたく存じます」

 ジャニーの姉・メリー喜多川の娘でもあるジュリーにとっては、故人の名誉も守りたいし、所属するアイドルたちのイメージダウンも極力避けたいところだ。また「なかった」ことの証明は「あった」ことの証明よりも困難で「悪魔の証明」と呼ばれたりもする。

 一方、告発する側にも確たる証拠はないし、説得力があるとはいいがたい。告発者のひとりであるカウアン・オカモトについても「意外な素顔」(女性セブン)が報じられた。その記事では、元同居人というミュージシャンが、

根性を叩き直せと引っ越しのバイトをやらされましたが給料は取られ、ほかの仕事でも、まともなギャラは払ってもらえませんでした」

 と、カウアンからのパワハラを告発していたり、別の告発者が、

「被害者の告発の中身に、それはちょっと違うんじゃない?と思うところもありますよ。4年間で200人はさすがに考えられないと思います」

 と、カウアンの話の盛りすぎを指摘していたりする。なお、カウアンは昨年、当時国会議員だったガーシーとの対談でもジャニーを告発。しかし、ガーシーはその後、国会議員を除名されたあげく、名誉棄損などで逮捕状を出され、今は国際手配中だ。

 このため、カウアンにも、うさんくさい印象を持つ人が少なくない。それはまぁ、そういうものだろう。

 セクハラなどの被害をSNSやメディアで拡散して告発する「ミートゥー」運動。今回もその流れのひとつといえるが、こういう告発には後出しじゃんけん的な印象もつきまとう。特に大人同士の場合、イヤならその場で拒絶すればよいし、すぐに警察や弁護士に相談することもできる。それをせず、あとから蒸し返すのは本来みっともないことでもあるのだ。

 ジャニー騒動の場合は、一方の当事者が少年だったりもするので、状況がやや異なるが、彼が手がけたアイドルたちのなかに彼を悪く言う者はほとんどいない。告発者が圧倒的に少ない以上、大半のケースがある意味ウインウインだったという推測も成り立つわけだ。

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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