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フランス革命と貨幣観の革命(佐藤健志・令和の真相30)

評論家・佐藤健志の「令和の真相30」

◆貴金属商品か、万能の借用書か

 貨幣(マネー)は価値ある大事なもの。

 これに異論のある人はいないでしょう。

 なにせ貨幣がないことには、財やサービスの入手が非常に難しくなってしまいます。

 

 とはいえ、貨幣にはなぜ価値があるのか。

 くだんの価値は何に由来するのか。

 二つの考え方があります。

 

 第一の考え方は、貨幣、とくに硬貨の素材として、金や銀といった貴金属がしばしば使われることに注目、「素材となる貴金属に価値があるから、貨幣は価値を持っているのだ」と見なすもの。

 貨幣自体を一種の貴金属商品と位置づけるためでしょう、「商品貨幣論」とか「金属主義」と呼ばれます。

 

 第二の考え方は、貨幣は「何らかの財やサービスの提供を受ける権利」を証明するものだから価値があると見なすもの。

 この権利のことを「信用(クレジット)」と申します。

 前回記事「フランス革命政府はMMTを実践していた!」では、信用について「何らかの財やサービスを提供した見返りを受け取る権利」と定義しましたが、くだんの見返りも「財やサービスの提供」という形を取るので、要は同じこと。

 

 信用の存在を証明できればいいのですから、貨幣の素材が何であるかは問題になりません。

 いわば、何にでも使えて、使用期限も決められていない「万能の権利書」のようなもの。

 もっとも財やサービスの提供を受けるというのは、相手に「借り」をつくることですから、対価として差し出される貨幣も「万能の借用書」と呼んだほうがいっそう適切でしょう。

 こちらは「信用貨幣論」とか「表券主義」と呼ばれます。

 

 経済学においては長らく商品貨幣論が支配的でしたが、近年になって、信用貨幣論のほうが正しいことがハッキリしてきました。

 後者の発想に基づく貨幣観を体系化したのが、MMTこと「現代貨幣理論」。

 しかるに商品貨幣論と信用貨幣論では、政府の発行できる貨幣の量をめぐる判断が大きく変わってくるのです。

 

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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