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手越に米倉、ローラに柴咲。独立する芸能人がのんの二の舞になる可能性

独立後の活動に圧力をかけるのは法的解釈としては独禁法違反だが……

■本名なのに名乗れないのん。芸能界とはそういうもの

2019年12月、舞浜アンフィシアターで行われた高級ブランド・ブルガリのアウローラアワード2019 ゴールデンカーペットセレモニーに出席したのん。スケスケのⅤネックで魅了した/写真:REX/アフロ

 芸能人の独立が相次いでいる。ここ数ヶ月でも、手越祐也に米倉涼子、ローラ、柴咲コウら大物がジャニーズ事務所やオスカープロモーションといったかつての所属事務所を離れ、個人事務所あるいはフリーランス的なスタンスに転じた。
 事情はそれぞれ異なるとはいえ、この現象は独立をめぐるハードルが低くなったことを感じさせる。が、実際のところ、ザ・芸能界はそこまでものわかりがよくなったのだろうか。

 というのも、せっかく先行投資をしてスターにした事務所にすれば、独立されるのはただただもったいなく口惜しいからだ。その資金は回収できていたとしても、次のスターを育てるためにはさらなる資金、そして看板が必要になる。つまり、売れれば売れるほど、手放したくはないし、また、ひとりを許せば他が続くおそれもある。それゆえ、独立されるのは極力避けたいのである。

 そこで思い出されるのが、数年前に起きたのん(能年玲奈)のケース。2013年にNHKの朝ドラ「あまちゃん」でブレイクした彼女はその翌年、傾倒する女流演出家と個人事務所を設立して、それまで所属していたレプロエンタテインメントを飛び出した。まさにこれから先行投資を回収しようというときに、独立されてはたまったものではない。2年後の16年、レプロはのんに、本名でもある芸名「能年玲奈」を使わせないなどの対抗手段を講じた。

 一方、独立後の彼女のエージェントである人物は昨年、朝日新聞デジタルでこんな内情を暴露。
「この3年で約30件、テレビ局からのんへ、ドラマや情報番組のオファーがあった。でも、こちらが企画に納得して、いざ出演契約を結ぶことになると、テレビ局から必ず『なかったことにしてください』と電話が入るのです。(略)『のんが出るなら、うちのタレントは出演を引き揚げる』といった圧力が電話で局側に入るようなのです。あるドラマでは衣装合わせまで済みながら、契約直前に『今回はなかったことに』と立ち消えになった。他にも、演奏会で詩の朗読をした際も、のんの存在は消され、もう1人の俳優さんだけがテレビで紹介されていた。理屈に合わない、ドロドロとしたことばかりが起きています」

 いわゆる「干された」という状況だが、この人物はのんが「テレビ番組に出ていないだけで、十分すぎるほどの経済的成功を収めている」と主張。「『弱い立場の人間がいじめの窮状を訴える』図式で捉えてほしくない」とも語った。

 ただ、このインタビューを読んだ際、のん側がこういうスタンスだと、状況は変わらないだろうなと感じたものだ。実際、この1年前にはのん自らレプロに出向いて謝罪し、再契約を願い出たことを「フライデー」が報じたが、レプロは「何ら解決には至っておりません」として、不快感をあらわした。
「当事者しか知り得ないはずの情報が事前に外部に漏れ、このような記事が出たことについては、大変不可解であり、誠に遺憾であります」

 おそらく、のん側がメディアを使って対等な駆け引きをしてきたことに腹を立てたのだろう。また、のん側の言い分を記事にした「週刊文春」がレプロに訴えられ、負けるという事態も起きた。事務所同士の力関係が歴然としている場合、弱いほうはもっとしおらしくしなければ和解にはいたらない。芸能界とは、そういうものだ。

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『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)
宝泉 薫

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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