いろいろ作ってきたけれど……【森博嗣】 新連載「日常のフローチャート」第19回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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いろいろ作ってきたけれど……【森博嗣】 新連載「日常のフローチャート」第19回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第19回


森羅万象をよく観察し、深く思考する。新しい気づきを得たとき、日々の生活はより面白くなる――。森博嗣先生の新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」。人生を豊かにする思考のツール&メソッドがここにあります。 ✴︎BEST TIMES連載(2022.42023.9)森博嗣『静かに生きて考える』が書籍化(未公開原稿含む)。絶賛発売中。


 

 

第19回 いろいろ作ってきたけれど……

 

【いつもなにかを作っていた】

 

 工作を始めたのは、幼稚園の頃で、そのきっかけは、近所の家で3つくらい歳上の女の子が、キャラメルの箱を何個かくっつけて、小物入れを作ったのを見せてくれたことだった。どうやって、それをくっつけたのかときいたら、「ご飯で」と教えてくれた。さっそく家に帰って、母にご飯をくれと頼んだのを覚えている。ご飯粒が接着剤だったのだ。

 やはり、幼稚園のとき、父が製図板で電車の展開図を描いてくれた。彼は建築の設計を仕事にしていたからだ。展開図をハサミで切り出し、糊代にご飯粒をつけ、電車の立体形になったのは、カルチャ・ショックだった。

 小学1年生のときだと思う。市街地の一角にある噴水を囲む池で、中学生だろうか、少年たちがモータボートの模型を持ち寄り、競争をさせていた。電池とモータで動くプラモデルだった。少なくとも5人くらいが、それらを持っていて、池の片側でボートを手放し、走りだすと反対側へ走っていって、自分のボートを待ち受ける。それを見て、僕はショックを受けた。そのあと、夜のうちに父に模型店へ連れていってもらい、プラモデルのモータボートを買ってもらおうとした。だが、入った店には、そんな品物がなく、その日は買えなかった。プラモデルというものも、そのときまで知らなかったのだが、ボードだけでなく、いろいろな模型があることがわかった。

 プラモデルは、小学校の低学年までで飽きてしまった。高学年になると、少年雑誌を買ってもらえるようになり、工作のページを楽しみにしていた。鉄道模型や模型飛行機があることを知り、いつか自分も作ってみたいと夢見ていた。

 お小遣いは数百円だが、当時は、それで買えるプラモデルがあった。しかし、モータは別売で、プラモデルと同じくらいの値段がした。さらに、電池も高い。高いのに、すぐなくなってしまう。だから、遊べる時間はほんの僅かだった。

 小学生のうちに、鉄道模型には入門できた。それ以外にも、いろいろ作った。大きなものでは、夏休みに自分一人で裏庭に小屋を建てた。これは、父の仕事の関係で材木が沢山あったからだ。捨てられた自転車を2台つなぎ合わせ、人力自動車も作った(人力だから自動ではないが)。天体望遠鏡も作ったし、室内で飛ぶヘリコプタ(棒の先に取り付けられ反対側のウェイトで釣り合わせたもの)も作った。夏休みの工作では、背丈1mのロボットを作って学校へ持っていった。これはリモコンで動くもので、モータが6つ使われていた。

 同時期に、電子工作にも夢中になり、アマチュア無線技士の免許を取得し、無線機を自作するようになる。ロケットの実験をしようとして、火薬の材料を買いにいき、薬局で叱られたこともある。

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✴︎森博嗣 新刊『静かに生きて考える』発売忽ち重版!✴︎

 

 

森博嗣先生のBEST T!MES連載「静かに生きて考える」が書籍化され、2024年1月17日に発売決定。第1回〜第35回までの原稿(2022.4〜2023.9配信、現在非公開)に、新たに第36回〜第40回の非公開原稿が加わります。

 

 

 世の中はますます騒々しく、人々はいっそう浮き足立ってきた・・・そんなやかましい時代を、静かに生きるにはどうすればいいのか? 人生を幸せに生きるとはどういうことか?

 森博嗣先生が自身の日常を観察し、思索しつづけた極上のエッセィ。「書くこと・作ること・生きること」の本質を綴り、不可解な時代を見極める智恵を指南。他者と競わず戦わず、孤独と自由を楽しむヒントに溢れた書です。

 〈無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状況といえるだろう。人間は何故生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものなのだから、辻褄が合っている。〉(第5回「五月が一番夏らしい季節」より)。

 

 

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森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

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