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〝学び直し〟で〝バージョン・アップ〟した自分を目指す愚かさ 「リカレント教育」の矛盾を突く【大竹稽】

「自主性」の大誤解を正す!

 

■「自主性」をリカレント教育に持ち込むから不幸になる!

 

 本来的な自主性なら、リカレント教育など不要なのです。最先端のテクノロジーにキャッチアップする人もいます。それを学びたい人もいるし、そんなものに無縁でも全然、平気な人もいます。最先端テクノロジーを獲得した人物たちが、なんでもできる完璧屋だと思ったら大間違い。メールを使いこなせても手紙上手なわけではありません。パソコンで描いたイラストと、紙に書かれた日本画や油絵は、やはり別物なのです。

 そして、最新のテクノロジーがなくても「なんとかなる!」ことを教えられるのは、前時代の機械たちの醍醐味を教えられるのは、それを生活レベルで経験した人物たちなのです。

 私は、「助け合い」「支え合い」という道徳的なきれいごとを主張しているのではありません。大誤解されている「自主性」をリカレント教育にまで持ち込んでしまう紋切り型に、憤っているのです。

 自主性は常に「私たち」でなければなりません。「一人一人」なんて言っているようでは、やっぱり脇も思考も甘いと言わざるを得ませんよ。

 

文:大竹稽

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大竹稽

おおたけ けい

教育者、哲学者

株式会社禅鯤館 代表取締役
産経子供ニュース編集顧問

 

1970年愛知県生まれ。1989年名古屋大学医学部入学・退学。1990年慶應義塾大学医学部入学・退学。1991年には東京大学理科三類に入学するも、医学に疑問を感じ退学。2007年学習院大学フランス語圏文化学科入学・首席卒業。その後、私塾を始める。現場で授かった問題を練磨するために、再び東大に入学し、2011年東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程入学・修士課程修了(学術修士)。その後、博士後期課程入学・中退。博士課程退学後はフランス思想を研究しながら、禅の実践を始め、共生問題と死の問題に挑んでいる。

 

専門はサルトル、ガブリエル・マルセルら実存の思想家、モンテーニュやパスカルらのモラリスト。2015年に東京港区三田の龍源寺で「てらてつ(お寺で哲学する)」を開始。現在は、てらてつ活動を全国に展開している。小学生からお年寄りまで老若男女が一堂に会して、肩書き不問の対話ができる場として好評を博している。著書に『哲学者に学ぶ、問題解決のための視点のカタログ』(共著:中央経済社)、『60分でわかるカミュのペスト』(あさ出版)、『自分で考える力を育てる10歳からのこども哲学 ツッコミ!日本むかし話(自由国民社)など。編訳書に『超訳モンテーニュ 中庸の教え』『賢者の智慧の書』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)など。僧侶と共同で作った本として『つながる仏教』(ポプラ社)、『めんどうな心が楽になる』(牧野出版)など。哲学の活動は、三田や鎌倉での哲学教室(てらてつ)、教育者としての活動は学習塾(思考塾)や、三田や鎌倉での作文教室(作文堂)。

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