スケジュール帳がビッシリ?「忙しいが美徳」は大間違い。人間の器量は「暇の使い方」で決まる【大竹稽】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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スケジュール帳がビッシリ?「忙しいが美徳」は大間違い。人間の器量は「暇の使い方」で決まる【大竹稽】

大竹稽「脱力の哲学」6 〜暇こそ本番〜


東大理三に入学するも現代医学に疑問に抱き退学、文転し再び東大に入る。東大大学院博士課程退学後はフランス思想を研究しながら、禅の実践を始め、現在「てらてつ(お寺で哲学する)」を主宰する異色の哲学者・大竹稽氏。深く迷い、紆余曲折しながら生きることを全肯定する氏が、「集中力の正体」を語るシリーズ。意識高いビジネスパーソンの落とし穴とは? 「スケジュール帳がビッシリで忙しい」と言って充実感に浸っているとしたら要注意。


アラン(Alain)ことエミール=オーギュスト・シャルティエ(Émile-Auguste Chartier)。1868- 1951。哲学者、評論家、モラリスト。『幸福論』が有名。

 

■暇は自由、退屈は不自由

 

 「暇だなぁ」と「退屈だなぁ」、使い分けていますか?

 これを無残に混同してしまうと、もったいない。「集中力」をテーマにした最終回は、そんなお話をしたいと思います。

 もう一度聞きましょう。最近、「暇だなぁ」と感じたことはありますか? それ、どんなシチュエーションでしたか?

 もしかしたら、今やノリにノッているあなたは暇などないほど、忙しいかもしれません。でも、暇は不意に出来てしまうもの。そんな暇も、仕事しようとしていませんか?

 ではもう一つ、最近「退屈だなぁ」と感じたことはありますか? おかげさまで、ここ十数年は、「退屈だなぁ」がなくなりました。オンライン会議の出席を無理強いさせられることもないですし、ワンパターンな先生の授業に出なければならないこともありません。

 さて、冒頭でいきなりパスした問いに、わたしなりに答えましょう。「暇は自由、退屈は不自由」なのです。「暇だ」とは「することがない」状態に発する言葉、一方の「退屈だ」は、「しなければならない」ことに飽きてしまった時に思わず漏れ出る本音でしょう。

 さてさて、暇と退屈をしっかり判別できるようになったところで、今回の表題「暇こそ本番」に入ります。とはいえ、聡い人は、この時点で既に、わたしの言いたいことを察知されたかもしれませんね。

 昨今は、予定が詰まっていないと不安になってしまう予定マニアいるそうですね。スケジュール帳にビッシリと書き込まれた予定。少しでも隙間があろうものなら、そこを埋めるべく予定を作る。そんなマニアたちです。彼らの埋め尽くされたスケジュール帳は、充実度の証なのでしょうかね。しかし、充実感は余白のほう、つまり「暇」にこそ約束されているのです。

 

白川静先生の『常用字解』を参照しましょう。

 「暇」は「日」と「叚」が組み合わさってできています。「叚」について、白川先生は、「まだみがいていない原石ままのもの」と解説しています。これはつまり、「未知数のもの」であり、「遠い、大きい」などの意味を含んでいるようです。原石は、磨かなければなにものになるかわかりません。およその見当がついたとしても、予定通りの石が出て来るかは、磨いてようやくわかります。

 「暇」も同じです。

 「暇」はだらけて潰すものなどではありません。「暇」は集中を楽しむ人にとって最高の状況なのです。「何もするべきことがない」からこそ、自由なのです。自由ということは、発想も行為も創造も自由。原石である「暇」の使い方を決めるのはあなた自身。暇の使い方次第で、その限られた時間が価値あるものになることもあれば、無駄になってしまうこともあるでしょう。「暇を潰す」なんて、もったいないんです。

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大竹稽

おおたけ けい

教育者、哲学者

株式会社禅鯤館 代表取締役
産経子供ニュース編集顧問

 

1970年愛知県生まれ。1989年名古屋大学医学部入学・退学。1990年慶應義塾大学医学部入学・退学。1991年には東京大学理科三類に入学するも、医学に疑問を感じ退学。2007年学習院大学フランス語圏文化学科入学・首席卒業。その後、私塾を始める。現場で授かった問題を練磨するために、再び東大に入学し、2011年東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程入学・修士課程修了(学術修士)。その後、博士後期課程入学・中退。博士課程退学後はフランス思想を研究しながら、禅の実践を始め、共生問題と死の問題に挑んでいる。

 

専門はサルトル、ガブリエル・マルセルら実存の思想家、モンテーニュやパスカルらのモラリスト。2015年に東京港区三田の龍源寺で「てらてつ(お寺で哲学する)」を開始。現在は、てらてつ活動を全国に展開している。小学生からお年寄りまで老若男女が一堂に会して、肩書き不問の対話ができる場として好評を博している。著書に『哲学者に学ぶ、問題解決のための視点のカタログ』(共著:中央経済社)、『60分でわかるカミュのペスト』(あさ出版)、『自分で考える力を育てる10歳からのこども哲学 ツッコミ!日本むかし話(自由国民社)など。編訳書に『超訳モンテーニュ 中庸の教え』『賢者の智慧の書』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)など。僧侶と共同で作った本として『つながる仏教』(ポプラ社)、『めんどうな心が楽になる』(牧野出版)など。哲学の活動は、三田や鎌倉での哲学教室(てらてつ)、教育者としての活動は学習塾(思考塾)や、三田や鎌倉での作文教室(作文堂)。

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