日常生活に閉塞感を覚えて、精神を整えたくなったとき 〈何もしないことを目的に〉私が訪れる場所【神野藍】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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日常生活に閉塞感を覚えて、精神を整えたくなったとき 〈何もしないことを目的に〉私が訪れる場所【神野藍】

神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第26回


早稲田大学在学中にAV女優「渡辺まお」としてデビュー。人気を一世風靡するも、大学卒業とともに現役を引退。その後、文筆家・タレント「神野藍」として活動し、注目されている。AV女優「渡辺まお」時代の「私」を、神野藍がしずかにほどきはじめた。「どうか私から目をそらさないでいてほしい・・・」赤裸々に綴る連載エッセイ「私をほどく」第26回。


神野藍

  

【縁もゆかりもない場所なのに】

 

 「あ、京都いかないと。」

 その感情は何の前触れもなく唐突にやってくる。今回は立て続けに起こった仕事上のトラブルを処理している渦中にすとんと考えが降ってきたのだった。「旅行をしたい」とか「京都に行きたい」といった、もっと手前で浮かんでくるはずの気持ちを全て追い抜いて、不思議なぐらいの強制力をもったものであった。今回はちょうどよくスケジュールだけを抑えていたものの、行先が決まっていない旅行計画があり、そこにぴったりと今回の感情をはめ込むことができた。そうやって目に見える形で未来が決まると、抱えている仕事の量も、心に淀んだ何かが日に日に堆積していくのも全て、どうにか目を瞑って受け入れることができた。

 実は、同じように自分の内なる何かに突き動かされて京都を訪れるというのを何回か行っている。去年は本格的に夏がやってくる前ぐらいに四日ほど滞在していた。最近は友人から〈よく京都にいる人〉と認識されていて、「毎回行っているけど、何してるの?」と聞かれるほどである。私自身、京都に何か所縁があるわけではない。遠い親戚まで含めても京都に住んでいた人はいないし、幼少期に連れられていって何か衝撃を受けたみたいなエピソードもない。むしろ初めて訪れたのは高校三年生の終わりの頃で、そのときはこの街とそんなに深く付き合っていくことになるとは思いもしなかった。

 最近では旅行の意識すら薄れてきている。必要最低限の荷物をキャリーバッグに詰め込み、立ち寄りたい店を数件チェックしておいて、到着してからの気分で行くかどうかの最終判断を下すようにしている。以前は「気になる場所は全部行かないと」と意気込んで、足が棒になるぐらいまで一日中歩き回っていたが、今はその場の空気とか時間の流れに身を任せて過ごすようになった。

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神野藍

じんの あい

文筆家。元AV女優。

1999年生まれ。2020年5月、早稲田大学在学中に渡辺まおとしてAV女優デビュー。2022年5月、現役引退後は、文筆家・タレントとして活動中。好きな本は谷崎潤一郎『痴人の愛』。趣味はトレーニング。

■「現代ビジネス」での社会風俗ぶった斬りコラム(https://gendai.media/list/author/aijinno)が人気沸騰中。

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