「集中力」とは “好奇心” があれば無意識に発揮される力。大人になってようやく分かるファーブルのかっこ良さとは【大竹稽】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「集中力」とは “好奇心” があれば無意識に発揮される力。大人になってようやく分かるファーブルのかっこ良さとは【大竹稽】

大竹稽「脱力の哲学」4 〜集中力の正体〜


東大理三に入学するも現代医学に疑問に抱き退学、文転し再び東大に入る。東大大学院博士課程退学後はフランス思想を研究しながら、禅の実践を始め、現在「てらてつ(お寺で哲学する)」を主宰する異色の哲学者・大竹稽氏。深く迷い、紆余曲折しながら生きることを全肯定する氏が、「集中力の正体」を語るシリーズ。意識高いビジネスパーソンが求めてやまない「集中力」とは何か? 夏の虫取りをまた大人も経験してみたらいいかも。


ジャン・アンリ・ファーブル(1823-1915)。フランスの動物学者。詩人。昆虫の行動研究の先駆者。

 

◾️集中力がないビジネスマンは好奇心がないってこと?

 

 そもそも、なぜ集中力が問題になるのでしょう?

 そこには、わたしたちが無意識に前提としている状況があります。

 与えられた仕事や課題が、退屈なのかもしれません。義務感はあるが決して楽しくない。キャリア・レースに勝つことが最優先。締め切りが迫っている切迫感。課題の目的や意義が実感できない。このどれもが、どうにもポジティブになれない状況です。

 だから、そんな状況でも自分を奮い立たせるために「集中力」が要請されるのでしょう。

 しかし、誰にでも自然に「集中」していた頃があったはずです。

 わたしは田舎で育ちました。田んぼに囲まれていたため、たくさんの虫に出会いました。好奇心の向くままに、メダカにザリガニにタウナギを探しました。まさに時間を忘れて「集中」していたのです。「どうすれば集中できるか?」なんか、問題にもならなかったのです。

 おそらく、みなさんそれぞれに固有の幼少期の体験があるのではないでしょうか。どれほど難しいことであっても、自らの好奇心に導かれていれば、退屈することも焦ることもないでしょう。

 歴史に名を残した科学者たちは、まさに「好奇心」の塊でした。アインシュタインしかりニュートンしかり、レオナルド・ダ・ヴィンチしかりファーブルしかり。確かに、類い稀な好奇心ではあるのですが、それは彼らだけに与えられた天才なのでしょうか?

 いえいえ、わたしたちの誰もがこの才能を与えられていたはず。子ども時代を思い起こせば、この事実を認められるでしょう。思い起こす材料がないのなら、周りの子どもたちを見てみましょう。どの子も好奇心の塊です。むしろわたしたちは、天から授かった好奇心を、成長とともに鈍らせてしまったのです。

 虫好きのわたしにとっては、ファーブルはお手本でした。彼の著作『ファーブル昆虫記』は有名です。しかしこれを読み果たした人は少ないのではないでしょうか。なんせ、原書 《Souvenirs Entomologiques》は全十巻、岩波文庫日本語訳でも全十巻、集英社文庫では全二十冊に及ぶ超大作。読破の難易度は相当に高いでしょう。虫に関心がなければ、これを読まされることは苦痛になるでしょう。しかし、虫への好奇心に導かれれば、この超大作はご馳走になります。

次のページ多くの人には無価値でくだらないものが、とても魅力的に見えていたファーブル

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    大竹稽

    おおたけ けい

    教育者、哲学者

    株式会社禅鯤館 代表取締役
    産経子供ニュース編集顧問

     

    1970年愛知県生まれ。1989年名古屋大学医学部入学・退学。1990年慶應義塾大学医学部入学・退学。1991年には東京大学理科三類に入学するも、医学に疑問を感じ退学。2007年学習院大学フランス語圏文化学科入学・首席卒業。その後、私塾を始める。現場で授かった問題を練磨するために、再び東大に入学し、2011年東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程入学・修士課程修了(学術修士)。その後、博士後期課程入学・中退。博士課程退学後はフランス思想を研究しながら、禅の実践を始め、共生問題と死の問題に挑んでいる。

     

    専門はサルトル、ガブリエル・マルセルら実存の思想家、モンテーニュやパスカルらのモラリスト。2015年に東京港区三田の龍源寺で「てらてつ(お寺で哲学する)」を開始。現在は、てらてつ活動を全国に展開している。小学生からお年寄りまで老若男女が一堂に会して、肩書き不問の対話ができる場として好評を博している。著書に『哲学者に学ぶ、問題解決のための視点のカタログ』(共著:中央経済社)、『60分でわかるカミュのペスト』(あさ出版)、『自分で考える力を育てる10歳からのこども哲学 ツッコミ!日本むかし話(自由国民社)など。編訳書に『超訳モンテーニュ 中庸の教え』『賢者の智慧の書』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)など。僧侶と共同で作った本として『つながる仏教』(ポプラ社)、『めんどうな心が楽になる』(牧野出版)など。哲学の活動は、三田や鎌倉での哲学教室(てらてつ)、教育者としての活動は学習塾(思考塾)や、三田や鎌倉での作文教室(作文堂)。

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