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【宮台真司】なぜ日本では夫婦の「セックスレス」が増加し続けているのか?

「社会という荒野を生きる。」その真実と極意〈連載第6回〉

■デートを再現するという処方箋

 

 どうすればいいか。簡単です。僕たち夫婦には、8歳、5歳、1歳と子供が3人いて、最近では4人目もいいね、という話も。しかし、そこで言いたいのは、「セックスは、すりゃいいというもんじゃない」ということです。

 考えてみて下さい。子供まみれの状態で、寸暇を見つけて5分10分で済ませるっていうのが、夫婦にありがちなセックスのやり方。僕は高校生になった当時(1974年)に夫婦のセックス持続時間の統計を見て、「こりゃいけない」と思いました(笑)。

 夫婦中心主義とは、日常の時空間から離れて、非日常の演出にコストをかけること。僕たち夫婦は、毎月カレンダー上に「夫婦の日」を書き入れ、かなり前から保育所や親族に子供たちを預ける手配をして、独身時代の休日みたいに朝からデートします。

 一緒に映画を見に出かけたり、二人の思い出の場所に出かけたり。天気が悪ければ、DVDやブルーレイを見たり、とっておきのランチを僕が作ったり。そうやって夫婦の時空間を作って、デートをした上で、ちゃんとセックスする。

 日本的なセックスレス夫婦への対処法は、もうお分かりですね。日常と隔離された非日常性の時空を演出する。出会った頃のデートを再現する努力です。当時は「いい感じ」だったでしょう? 思い出せるでしょう?

「そういう感じ」の中にセックスを置くんです。ほらね、いつもの硬派な社会学者と違って「愛の伝道師」っぽいでしょう?(笑)。過去2年間やってきた恋愛ワークショップでは、こういうことに気づいてもらってきたわけですよ。

 

■若者は性愛関係よりも友人関係を重視

 

 続いて第二の謎。日本では過去10年でセックスレス夫婦が相当増えました。夫婦の子供中心主義は昔から変わらないのに、セックスレスが増える。冒頭に述べたように絶対値が不正確でも、相対値から読み取れる増加傾向は間違いない。

「もともと多い」ことに加えて「なぜ増えているのか」です。これも社会学的に説明できます。セックスレスの度合いは、年齢層で違います。と言うと、「そうね、年を取ればやっぱり回数が減るよね」という話だと受け取りましたか?

 違うんだな、これが(笑)。巷では昨今「団塊の世代がセックスにとちくるっている」という特集がさんざんなされていて、昔の「鴨とクレソンの鍋」[渡辺淳一の小説『失楽園』のストーリーで、不倫関係の主人公とヒロインがセックスしながら心中する直前に食べた料理のこと]の『失楽園』じゃありませんが、人は死ぬ前に性に執着するんですね……という話がしたいんじゃない。

 逆です。ここで大事なことは、『愛のキャラバン』や『「絶望の時代」の希望の恋愛学』で述べてきたように、「若い世代が性から退却している」こと。学生のカップルなどを見ても、「2カ月に一度やるかやらないかです」みたいなのが、キャンパスにあふれています。

 僕が大学生の頃はどうだったでしょう。大学3年のときに数えたんです。そうしたら、年に400回やってました(笑)。まあ、いつも東京大学のキャンパスで手をつないで歩いていたから、有名だったんですけどね。

 ところが、昨今の学生カップルはテンションが低いんです。一月に一度を割り込むのはザラです。いったいなぜ、こんなことになっているのか。理由の一つは、いろんな本に書いてきたことですが、カップルが「雛壇にあげられる」こと。

 昔は、いろんな小説や漫画に描かれてきたように、サークルや語学クラスで、寝取ったり、寝取られたりがよくありました。『「絶望の時代」の希望の恋愛学』で詳しく話した通りです。最近ではこれがありません。

 カップルとして公認されると誰もさわらなくなるので、カップルであることを前提とした互いの友人関係のホメオスタシス(恒常性維持)の観点からも、たとえテンションが低くてもカップルである状態を保とうとする。

 だから、恋愛していても、同性の友人関係が優位となります。女子で言えば、性愛方面にハマりすぎていると、同性の友人たちの間で「ビッチ」呼ばわりされます。だから、◯△プレイみたいな情報や、歳の差恋愛の情報が、シェアされなくなりました。

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CONTENTS

はじめに◉「社会という荒野を生きる。」とは何か

第一章◉なぜ安倍政権の暴走は止まらないのか

    ——対米ケツ舐め路線と愚昧な歴史観

◉天皇皇后両陛下がパラオ訪問に際し、安倍総理に伝えたかったこと

◉安倍総理が語る「国際協調主義に基づく積極的平和主義」の意味とは

◉戦後70年「安倍談話」に通じる中曽根元総理の無知蒙昧ぶりとは

◉盛り上がった安保法制反対デモと、議会制民主主義のゆくえ

◉安保法案の強行採決に見られる日本の民主主義の問題点とは

第二章◉脆弱になっていく国家・日本の構造とは

    ———感情が劣化したクソ保守とクソ左翼の大罪

◉なぜ三島由紀夫は愛国教育を徹底的に否定したのか

◉「沖縄本土復帰」の本当の常識と「沖縄基地問題」の本質とは

◉大震災後の復興過程で露わになった日本社会の「排除の構造」とは

◉除染土処理の「中間貯蔵施設」建設計画はすでに破綻している!? 

◉なぜ自民党はテレ朝・NHKの放送番組に突然介入してきたのか

◉憲法学の大家・奥平康弘先生から学んだ「憲法とは何か」について

◉広島・長崎原爆投下から70年と川内原発再稼働の偶然性とは

第三章◉空洞化する社会で人はどこへ行くのか

    ———中間集団の消失と承認欲求のゆくえ

◉ISILのような非合法テロ組織に、なぜ世界中から人が集まるのか

◉ドローン少年の逮捕とネット配信に夢中になる人たちの欲望とは

◉元少年Aの手記『絶歌』の出版はいったい何が問題なのか

◉地下鉄サリン事件から20年。1995年が暗示していたこととは

◉「お猿のシャーロット騒動」と日本のインチキ忖度社会とは

◉戦後日本を代表する思想家・鶴見俊輔氏が残したものとは何か

第四章◉「明日は我が身」の時代を生き残るために

    ———性愛、仕事、教育で何を守り、何を捨てるのか

◉なぜ日本では夫婦のセックスレスが増加し続けているのか

◉労働者を使い尽くすブラック企業はなぜなくならないのか

◉「仕事よりプライベート優先」の新入社員が増えたのはなぜか

◉「すべての女性が輝く社会づくり」は政府の暇つぶし政策なのか

◉ISILの処刑映像をあなたは子供に見せられますか

◉青山学院大学学園祭の「ヘビメタ禁止」騒動は何が問題だったのか

◉「ベビーカーでの電車内乗車」に、なぜ女性は男性より厳しい目を向けるのか

以上「目次」より

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宮台 真司

みやだい しんじ

社会学者

1959年宮城県生まれ。社会学者。映画批評家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。社会学博士。1995年からTBSラジオ『荒川強啓 デイ・キャッチ!』の金曜コメンテーターを務める。社会学的知見をもとに、ニュースや事件を読み解き、解説する内容が好評を得ている。主な著書に『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社、ちくま文庫)、『正義から享楽へ 映画は近代の幻を暴く』(bluePrint)、『子育て指南書 ウンコのおじさん』(共著、ジャパンマシニスト社)、『どうすれば愛しあえるの 幸せな性愛のヒント』(二村ヒトシとの共著、KKベストセラーズ)、『社会という荒野を生きる。』(KKベストセラーズ)、『崩壊を加速させよ 「社会」が沈んで「世界」が浮上する』(bluePrint)、『大人のための「性教育」 (おそい・はやい・ひくい・たかい No.112) 』(共著、ジャパンマシニスト社)など著書多数。

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