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保護柴たちの未来を考える(番外編) ─かわいそうだから、という理由で保護犬を迎えないでほしい─

保護犬だって、出産もすればお腹も見せる。


保護犬をとりまく状況は一進一退を繰り返しています。命が関わることだから、ある意味では当然でしょう。すべてが解決に向かうには、何かしらのブレイクスルーが必要なのだとも思います。
しかし、それでもやはり、よりよい状況を目指してひとつずつ積み重ねていくしかない。総体ではなく客体で考えることも重要なのです。
そしてそれは、わたしたちの暮らしと地続きのもので、むしろ視点は低めにあるべきなのではないでしょうか。高尚さはここではあまり役に立たないと思うのです。

「かわいそうだから、という理由で保護犬を迎えないでほしい」

これは多くの保護団体のみなさんから聞いた言葉です。今回は保護犬を迎えたすてきなご家族のお話をお届けしましょう。
神奈川県の海のそば、高嶋家で暮らすナツとマメは母娘犬です。
保護センターから迎えられたナツは、実は妊娠しており、高嶋さんは自宅で出産に立ち会いながら、2頭の子犬をとりあげたそう。家族に少しずつ心を開いてきたナツと、生まれながらに天真爛漫なマメは、対称的な性格ながら、いい距離感を保って仲良く暮らしています。


■柴犬のオスが希望だったけれど…

現在ご両親と暮らす高嶋さんの愛犬は、推定13歳のナツと8歳のマメ。2頭の柴犬は母娘です。ナツが老齢になるにつれてマメのほうが力が強くなり、何となく立場は逆転しつつあるそうですが、これまで大きな喧嘩をすることもなく、いい距離を保ちながら一緒に過ごしているのだそう。高嶋さんがナツと出会ったのは、ある保護センターでした。

「2011年の夏のことです。以前飼っていた雑種犬が2008年に亡くなり、犬のいない生活に寂しさを感じていた頃に、東日本大震災を経験して…。この先何があるかわからないし、また犬のいる幸せな生活を送りたいと思っていました。でも家族が賛成していなかったので、保護犬の里親が見つかるまでの一時的な預かりボランティアをしようと考え、保護団体の活動をしていた知人に、保護センターに連れて行ってもらうことにしたんです」

保護センターに向かう道すがら、その知人からは「犬たちを見て、この子も助けたい、あの子も助けたいと思っても、全部の犬を救えるわけではないから、犬種や性別のイメージを決めておいたほうがいい」と言われ、高嶋さんはオスの柴犬がいたら連れて帰ろうと決めました。

「柴犬はかわいいですし、前に飼っていた犬がオスだったので。でもセンターにいたオスの柴犬は、収容期間が長かったためかとても気が立っていて、触わろうとすれば唸って噛みつきそうな雰囲気でした。家に迎えても自分がコントロールできそうもないし、里親を探せるかどうかも不安だと感じたので、別の犬を紹介してもらうことにしたんです。それがナツでした」

ヒート中ということで個室に隔離されていたそのメスの柴犬は、推定5歳。他の犬たちが吠えている中、だまって座ってこっちを見ていました。高嶋さんのナツへの第一印象は「無になっている感じ」だったそうです。

「周りの犬が吠えてうるさい中にいたり、本当は綺麗好きなはずなのに限られた生活場所で排泄しなければならなかったり…。そこでの生活を受け入れるために、いろんな感情を捨てているように感じました。でも、散歩に連れ出したらおとなしく連いてきてくれて…久しぶりに外の光を見たのか、嬉しそうにしていました。なぜかその時『この子を連れて帰ろう』と決めました」

次のページある日、いきなり産気づいて…

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小西 秀司

デザイナー・編集者・プランナー

出版社での雑誌編集を経て、4年以上にもおよぶアジアへの旅に。帰国後はフリーのエディトリアルデザイナーとして活躍しながらフレンチブルドッグ専門誌「BUHI」(オークラ出版)を創刊し、現在も編集長を務める。犬に対する圧倒的な愛情、柔らかな感性が多くの犬好きの共感を呼び、ワークショップの開催やラジオ出演など多方面で活躍中。弊社刊行『柴犬ライフ』統括編集。

著書は「動物たちのお医者さん」(小学館)、「きみとさいごまで」(オークラ出版)「どうして こんなにも 犬たちは」(三交社)など。


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