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女性を「失業や貧困や自殺」から救うために上野千鶴子氏が知るべきこと【中野剛志】

財政赤字は、本当に将来世代へのツケなのか?

■女性を、失業や貧困あるいは自殺から救うために

 

 さて、日本政府は、自国通貨を発行するので、財源の制約を受けずに、財政支出を拡大することができます。

 もちろん、財政支出を拡大し過ぎて、需要が過剰になり、供給が追い付かなくなると、インフレになります。

 マイルドなインフレであれば問題ありませんが、あまりに高すぎるインフレは困ります。

 そこで、財政支出を拡大し過ぎて高インフレにならないようにする必要があります。

 逆に言えば、高インフレにさえならなければ、財政支出をいくら拡大してもいいということです。

 

 日本は、もう三十年もデフレもしくはディスインフレで、コロナ渦で、さらにデフレ圧力が高まっています。

 ですから、今の政権は、もっと借金作って、財政支出を拡大し、雇用を増やしたり、給付金を給付したりして、多くの女性を、失業や貧困あるいは自殺から救うことができるのです。政府が、女性が働きやすい公的雇用を作るというアイディアもあります。

 そして、その借金のツケが若者に回ってくるということは、ありません。

 

 むしろ、今の政権が借金作らないで、財政支出を増やさず、感染を拡大させ、失業や貧困を増やし、我が国をいっそう衰退させることの方が、将来世代に重いツケを残します。

 中でも、コロナ禍での女性の失業、貧困、自殺を放置することによる将来へのツケは、特に深刻なものとなるでしょう。

 その女性を救うために必要な財政支出を否定するために、若い女性に「オジサンのツケを若者に払わせないでよ!」などと言わせるCMを作って、いったい何がうれしいのでしょうか。

 

 このように、上野千鶴子先生のツイッターでの発言は、財政政策の観点のみならず、ジェンダー平等の観点からも、問題だらけと言わざるを得ません。

 

文:中野剛志(評論家)

 

 

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中野 剛志

なかの たけし

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)。  

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