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女性を「失業や貧困や自殺」から救うために上野千鶴子氏が知るべきこと【中野剛志】

財政赤字は、本当に将来世代へのツケなのか?

■「財政赤字は、将来世代へのツケ」?

 

 そして、「財政赤字は、将来世代へのツケ」というのも誤解です。

 「財政赤字は、将来世代へのツケ」というのは、「国債の利払い費や償還費を賄(まかな)うために、将来、増税が必要だ」という理解に基づいています。

 しかし、この理解は、間違いです。国債の利払いや償還を行うために、また新規に国債を発行すればいいだけの話です。増税の必要はありません。

 

 ここで、「現代貨幣理論(MMT)」を参考にして、もっと根本的なことから説き起こしましょう。

 そもそも、日本のように、自国通貨を発行する政府は、自国通貨建て国債の返済が不可能になることはありません。つまり、財政破綻はしません。

 そもそも、自国通貨を発行している政府は、課税によって財源を確保する必要がありません。国民に課税をして通貨をとり上げたところで、その通貨は、もともとは政府が生み出したものなのですから。

要するに、税は、財源確保の手段ではないということです。

 

■税は、何のために必要なのか?

 

 では、税は、何のために必要なのか。

 まず、税は、通貨の価値を裏付けるために必要です。政府が通貨を納税手段として受け取るので、通貨には価値が生じ、取引や貯蓄などの手段として使われるのです。

 ですから、税は財源確保の手段ではないけれども、だからといって、税をいっさいなくせるわけではない。税をいっさいなくしてしまうと、通貨の価値が暴落し、ハイパーインフレーションになってしまうからです。

 つまり、税とは、通貨の価値を担保するために必要なのです。

 

 また、累進課税は、富裕層により重く税を課して、所得格差を是正します。この場合、税は、平等な社会を実現するための手段です。

 あるいは、炭素税は、炭素の排出に税を課して、排出を抑制します。この場合、税は、気候変動対策の手段となります。

 要するに、減らしたいものを減らすために、課税するのです。

(だからと言って、オジサンにだけ課税してはいけませんよ、上野先生。)

 

 こうして、税は、社会を望ましい形に調整するための手段になるというわけです。

 

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中野 剛志

なかの たけし

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)。  

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