日本で東京五輪を開催する価値がない、これだけの理由【平坂純一】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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日本で東京五輪を開催する価値がない、これだけの理由【平坂純一】

平坂純一「日本のハラスメント」

 

 

  元卓球選手の福原愛さん問題も通底している。人種や国籍は関係なく、人に結婚の失敗はありえる。プライベートな失敗を「モラル・ハラスメント」だとして関係のない雑誌が糾弾するのは、本人には大きなお世話である。常識感覚の齟齬や金銭が絡む以外に、犯罪行為もないのなら当人の問題に過ぎないだろう。「中途半端な男が日本のスターと結婚できて調子に乗ったのだろうな」それ以上の感想はない。

  僕はこれら“ハラスメントや“ルッキズムの実態そのものを肯定するつもりはない。問題は、人間関係におけるヴィヴィッドな問題をわざわざ公然に持ち出して、その時の回答が“ハラスメントの一言で片付ける凡庸さ、そして倫理観の浅さである。「昭和の老害ジイさん」として、森会長や電通重役を槍玉に挙げるのは簡単である。だが、彼らの存在そのものが戦後民主主義的保守であり、その代替となる思想が外来の、主にアメリカ由来の「○○ハラスメント」はじめ「ポリコレ」、「ルッキズム」その他であるとすれば、日本社会の会話が浅薄になった証左それ以外のなんだというのか。

  日本人が本来持っているはずの「常識」や「礼儀」、「倫理観」に反する言葉や態様に対する自浄処理能力が壊れたことを意味する。「お前は〜ハラスメントだ!」と指差されれば、最後である。これは生徒会にいるようなチクリ魔の所業であり、豊かなコミュニケーションは不可能になった。ムカっと来たら、その場で言い返すような爽やかさも現代日本人の社交には不在であり、たしなめる大人もいない。森喜朗より偉い、怖い、重鎮も鬼籍に入った。若者は昭和の残党である“コミュ障のオジサンに迷惑している。

  これらの争いは一切、国民を向いていない。一方は、電通や政権与党の「維持」の為に努める「戦後レジーム保守・脳筋オヤジ」、一方は世論とネット介した“世界の声を背景にする「グローバリスト・ポリコレ厨」は外圧を背景に糾弾してみせる。この五輪という名の“貧乏クジには無自覚に、国を開いて、日本らしさを放棄させられる。1964年には首都美化計画など近代化が無理に行なわれたことなどから、上記のアイデンティティ等に関する問題化以外にも、愛煙家には迷惑以外の何でもない「禁煙化」で人々を分断するのである。

  五輪中継はテレビ局にとって、「赤字以外の何も生み出さない事業」なのは有名な話で、テレビの上層部の本音は誰もやりたがっていない。せいぜい、個人の業績に関係する手柄欲しさ、無理矢理にでも盛り上がった風に見せるためだけだ。コロナの変異種問題も片付かぬうちに、被災地の整備されたエリアや「やまゆり園事件」など絡めて、深刻さを醸していればいいのだろう。三島由紀夫が激怒するであろう、人為的で不真面目な「神聖さ」に他ならない。五輪およびその中継は人倫を踏みにじるため、公序良俗に反するのではないか。

  日本の賢明な庶民にとって大迷惑な東京オリンピック、その前座を務めたポリコレやルッキズム問題にこれ以上、乗るべきではない。問題の構造は簡単で、まず「政府が庶民をいじめる」(経済・財政政策の失政を増税で補おうとする。そして、お金の行き届いていない人に向けての支援はなく、大企業の内部留保を高める政策を通す)、これを「ナショナル・ハラスメント」と呼びたい。

 

 

次のページ日本の問題の根源は、貧困、モラルハザード、そしてもうひとつ…

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