国民が貧困にならなければ、国家は赤字になっても構わない【中野剛志×黒野伸一】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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国民が貧困にならなければ、国家は赤字になっても構わない【中野剛志×黒野伸一】

この国はどうなる!? ポストコロナとMMT【対談第3回】

 

黒野:自分が経営者だったらわかるよ。リスク取れないもん、この環境じゃ。デフレだし。でもこの先、中野先生はコロナ後の日本経済はどうなると見ていますか?

 

中野:コロナで決定的になったのは、今後は「大きな政府」の時代だということですね。これは『富国と強兵』という本で詳しく書いたことですが、過去の歴史を紐解いても、戦後みんな大きな政府になった。なぜかというと、戦争になると、財政赤字だから軍艦を作りませんなんてことは言わないわけですよ。今の日本だとそうなりそうですけど、普通の国はそうはならないので、財政赤字が心配だけど、とりあえず負けちゃいけないから戦車や軍艦をガンガン作るので、政府は当然大きくなるんです。ところが、一度政府が大きくなると、戦争が終わっても、急には元には戻らない。第一次大戦や第二次大戦のときに政府が大きくなりましたが、戦争が終わっても元の大きさには戻らずに、戦争国家から福祉国家に変わったんです。だから日本の左翼の人には悪いけど、福祉国家というのは総力戦が生んだのですよ。

 

黒野:コロナはまさしく人類の戦争ですね。

 

中野まさにポール・クルーグマンが、それ言ってましたね。バイデン政権の200兆円の追加経済対策が過大だという批判に対し、彼は「戦時中の財政支出は、戦争に勝つために必要なだけやるもんだ」と反論していました。普通は、そう考えますよね。実際、各国は、財政出動しまくっています。しかも、コロナも急に消えるわけではない。だらだらと続く可能性の方が高い。もっと言うと、これだけ財政出動しているのに金利がたいして上がってない。物価もそれほど上がらない。「財政赤字をこれ以上拡大したら、金利が暴騰するとか、インフレが止まらなくなるんじゃなかったでしたっけ? でも、そんなことになっていない。ということは、MMTは正しいんじゃないですか?」という人たちが、日本の経済学者を除いて、増えてくると思いますね。

 

黒野:日本でMMTは難しいですか?

 

中野:日本の経済学者って現実を見ませんから。現実は見ないわ議論はできないわという人を説得するのは不可能です。そうなると日本は滅びるだけです。コロナ後の世界がどうなるか。結論は簡単で、わかってきた国は大きな政府にしてMMT的な考え方に近づいて生き残り、わからなかった国は従来の財政健全化論に固執して滅びる。その結果、後に残るのは、MMTMMT的な考え方。

 

黒野:国家が赤字になっても構わないから、国民が不幸にならないように、貧困にならないように金をばらまいて景気を浮遊させる。こんな簡単なことが何でわからないのか? でもまだ、消費税を上げると言っている人がいる。15%? そんなことを言っているヤツが可笑しいぞと、それをみんなが言える社会にしないと。でも、今回のコロナがあったので、さすがに変な方向に行かないのではないかと、期待したいですけどね。

 

中野:あとは、繰り返しになりますけど、この1020年で世代が変わってきていますから。だから私も、もうちょっと頑張ってみようかなと。

 

(中野剛志×黒野伸一 対談【完】)

 

 

著者略歴

中野 剛志(なかの たけし)

評論家

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)Nations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『日本経済学新論』(ちくま新書)、新刊に『小林秀雄の政治哲学』(文春新書)が318日に発売予定。『目からウロコが落ちる 奇跡の経済学教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)が日本一わかりやすいMMTの最良教科書としてベストセラーに。

 


 

 

黒野伸一 (くろの・しんいち)

小説家

1959年、神奈川県生まれ。『ア・ハッピーファミリー』(小学館文庫化にあたり『坂本ミキ、14歳。』に改題)で第一回きらら文学賞を受賞し、小説家デビュー。過疎・高齢化した農村の再生を描いた『限界集落株式会社』(小学館文庫)がベストセラーとなり、20151月にNHKテレビドラマ化。『脱・限界集落株式会社』(小学館)、『となりの革命農家』(廣済堂出版)、『長生き競争! (廣済堂文庫)、『国会議員基礎テスト』(小学館)、『AIのある家族計画』(早川書房)、『グリーズランド1 消された記憶』(静山社)、『お会式の夜に』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊が『あした、この国は崩壊する:ポストコロナとMMT』(ライブ・パブリッシング)が310日に発売予定。」

 

 

 

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