不穏な時代の「価値ある読書」こそ人間を精神から鍛えなおしてくれる【福田和也】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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不穏な時代の「価値ある読書」こそ人間を精神から鍛えなおしてくれる【福田和也】

“知の怪物”が語る「生きる感性と才覚の磨き方」

■本を読むとは、人生を作ること

 

 今回の初選集『福田和也コレクション1』でとりあげた、日本と西欧の作家たちは、みな偉大な作家たちだ。

 偉大な作家とは何だろう。

 有名だから、偉大という訳ではない。賞をたくさんもらったりしたから偉大なわけではない。

 作家が偉大だというのは、発明家や政治家が偉大なのと同じような意味で、あるいは探検家やスボーツ選手が偉大なのと同じ意味で偉大なのだ。

 はじめて電燈が点いた時にいかに世人が驚いたか。それと同じ感動を、人に与えることが出来るのが、偉大な作家だ。

 彼らの作品を、自分が映画監督になったつもりで、一場面、一場面を想起しつつ、その場面のあらゆる光や匂いや雰囲気を味わい尽くすようにして、味読してほしい。おそらくあなたは、彼が見いだした人間の魂のなかの新世界を発見するに違いない。そして、その発見は、間違いなくあなたの魂と人生の幅と可能性を広げるものだ。

 記したように、彼らは多分に「ろくでなし」と呼ばれるような人物であった。

 というのも、彼らは人生の可能性を極限まで押し広げようとしたからである。彼らは探検家たちのように誰も知らない感情の極限を味わい、世界記録保持者よりも俊足に人生を加速しようとした。故に彼らの作品を味わうことは、そのまま彼らの体験した精神の深さ、豊かさを共有することになるのだ。

 その豊かさが、そのまま君が生きること、生きる時間を作りだすことの能力を育てる。

 本を読むとは、人生を作ること。

 出来合いの人生を生きることを望まないのであれば、まず偉大な作家が書き著した書物の一頁をめくり、その一行目を味わってみることである。

(『福田和也コレクション1:本を読む、乱世を生きる』より本文抜粋)

 

 

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福田和也コレクション1:本を読む、乱世を生きる

国家、社会、組織、自分の将来に不安を感じているあなたへーーー

学び闘い抜く人間の「叡智」がここにある。

文藝評論家・福田和也の名エッセイ・批評を初選集

◆第一部「なぜ本を読むのか」

◆第二部「批評とは何か」

◆第三部「乱世を生きる」

総頁832頁の【完全保存版】

◎中瀬ゆかり氏 (新潮社出版部部長)

「刃物のような批評眼、圧死するほどの知の埋蔵量。

彼の登場は文壇的“事件"であり、圧倒的“天才"かつ“天災"であった。

これほどの『知の怪物』に伴走できたことは編集者人生の誉れである。」

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福田 和也

ふくだ かずや

1960年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。同大学院修士課程修了。慶應義塾大学環境情報学部教授。93年『日本の家郷』で三島由紀夫賞、96年『甘美な人生』で平林たい子賞、2002『地ひらく 石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞、06年『悪女の美食術』で講談社エッセイ賞を受賞。著書に『昭和天皇』(全七部)、『悪と徳と 岸信介と未完の日本』『大宰相 原敬』『闘う書評』『罰あたりパラダイス』『人でなし稼業』『現代人は救われ得るか』『人間の器量』『死ぬことを学ぶ』『総理の値打ち』『総理の女』等がある。

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  • 2021.03.03