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箱根駅伝名門校の挫折。その激動の時代を過ごした4年生の意地とプライド

箱根駅伝ノート・中央大学 第3回

前回44秒差で散った中央大学が、今年の箱根駅伝の予選会を3位で突破。2年生主将・舟津彰馬を軸に団結した名門校が、伝統の「C」のユニフォームで新たな歴史をつくることができるのか。
箱根を目指す選手たちの1年を追った「箱根駅伝ノート」を12月に上梓。自身、元箱根駅伝ランナーでもある酒井政人氏が、そのドラマに迫った。同大学の挑戦を全5回に渡ってお届けする。〈第3回〉

副キャプテンを務める竹内大地選手。

 2年生主将が引っ張る中央大は、他校からすれば〝いびつなかたち〟をしているチームに見えるだろう。当然、おもしろくない選手も出てくる。体育会系のなかで2学年違うと、プライドの大きさはかなり変わってくるからだ。

 4年生たちは今の中央大をどう思っているのだろうか。竹内大地(4年)は1年前のチーム状況をこう説明する。

「4年生が不甲斐ない状態で、3年生も2年生も任せられる状態ではなかった部分はありました。1年生がキャプテンになるかもしれないという話を聞いたとき、自分が立候補すべきなのかなと考えたんです。でも、そこまでの覚悟と自信がなくて。舟津が担うことになりました。1年生キャプテンで大変な部分もあったと思いますが、舟津は言いたいことを言いますし、彼自身も結果を残してきました。正直、納得する部分もありつつ、違うだろうという部分もありますよ。でも、舟津がキャプテンになってチームとしてうまく機能していると思います」

 竹内ら4年生は名門校のなかで〝激動〟ともいえる時代を過ごしてきた。箱根駅伝で28年連続シード権を失った3か月後に入学すると、箱根駅伝は15位、19位と低迷。昨年は指揮官が交代して、87回連続出場してきた伝統のタスキが途切れた。竹内は入学した頃から〝嫌な予感〟を感じていたという。

 春には同学年の長距離部員が8人いたものの、一般入試で入った選手がすぐに辞めると、2年時の夏頃に2名が退部。途中でマネージャーに転身した選手も部を去った。

「仲が悪かったわけではないですけど、入学したときから学年のなかで温度差はありましたね。2名は陸上に対しての意欲がなくなり、1名は当時のコーチと対立して辞めました」

 現在の4年生は竹内、蛭田雄大、江連崇裕と主務である木村総志のわずか4名。誰も箱根を経験していないが、4年生の意地とプライドは失っていなかった。今季は竹内が副キャプテン、江連が寮長、蛭田は役職こそないものの1年生の仕事を見る役割を担ってきたという。

「4年生は人数が少ない分、責任を感じていると思います。今季は箱根駅伝のシード権を目標にしているので、4年生として自分たちのやるべきことを明確化しました。舟津が厳しいことを言うので、自分が同じことを言っていたらチームはまわりません。自分はできるだけチームにやさしい言葉をかけるようにして、相談に乗ったり、励ますようにしています」

 最上級生は生活面のレベルを上げるべく、寮内でも目を光らせてきたが、競技面では悔しい結果が続いた。6月の全日本大学駅伝予選会では、1組を走った蛭田が36位(31分06秒60)、最終4組を任された竹内も25位(29分32秒72)と振るわず、全日本の出場を逃している。

 レースが行われた6月18日の練習日誌に竹内は自身の不甲斐なさを綴っている。

 
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酒井 政人

さかい まさと

1977年生まれ、愛知県出身。「箱根」を目指して東京農業大学に進学。1年時に出雲駅伝5区、箱根駅伝10区に出場。2年時の故障で競技の夢をあきらめて、大学卒業後からスポーツライターに。陸上競技をメインに取材して、様々なメディアに執筆している。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』(角川新書)、『箱根駅伝監督 人とチームを育てる、勝利のマネジメント術』(カンゼン)、『東京五輪マラソンで日本がメダルをとるために必要なこと』(ポプラ新書)。


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  • 酒井政人
  • 2017.12.19