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箱根予選会の悲劇から1年。新チームがあげた伝統校復活の狼煙

箱根駅伝ノート・中央大学 第1回

前回44秒差で散った中央大学が、今年の箱根駅伝の予選会を3位で突破。2年生主将・舟津彰馬を軸に団結した名門校が、伝統の「C」のユニフォームで新たな歴史をつくることができるのか。
箱根を目指す選手たちの1年を追った「箱根駅伝ノート」を12月に上梓。自身、元箱根駅伝ランナーでもある酒井政人氏が、そのドラマに迫った。箱根駅伝直前必読。同大学の挑戦を全5回に渡ってお届けする。〈第1回〉

就任2年目の藤原正和駅伝監督。箱根駅伝では2区と5区で区間賞を獲得した中央大の絶対的エースだった。

 2017年10月14日、第94回箱根駅伝の予選会が行われた。「駅伝」は1本のタスキを選手たちが順次つなげていく競技だが、同予選会はタスキを用いない。各校10名以上12名以下が20㎞レースに出場し、上位10位の合計タイムで争われる。

 人数的には〝余裕〟があるため、総合力が高ければ通過は固いはずだが、そんなに簡単なものではない。「予選会は魔物」と表現する監督もいるほど、難しい戦いが待ち構えている。これまでも通過確実と見られていた大学が、昭和記念公園で涙を流すシーンを何度も見てきた。近年は多くの大学が「集団走」を活用するなど、その戦いも戦略的になってきている。

 なお予選会に出場するには標準記録(有効期限内に5000m16分30秒以内もしくは1万m34分以内の公認記録を有する者など)があり、その基準を10人が突破できないと参戦できない。そのため予選会に出場するのが目標という大学もあるほど。彼らにとっては、予選会が〝夢舞台〟になる。

 今回は小雨のなかを49校575名のランナーが出走。過去最多9名の留学生が参戦したこともあり、高速レースになった。

 レダマ・キサイサ(桜美林大2)が歴代3位の57分27秒でトップを飾ると、ドミニク・ニャイロ(山梨学大3)も57分33秒の好タイム。日本人トップは畔上和弥(帝京大3)で59分30秒だった。気象条件に恵まれたこともあり、過去最多となる22人が60分切りを果たした。

 最初に10人を揃えた帝京大が歴代4位の総合タイム(10時間04分58秒)でトップ通過。以下、大東文化大、中央大、山梨学院大、拓殖大、國學院大、国士舘大、城西大、上武大の順で予選会をクリアした。

 最後のイスは東京国際大で、11位の日本大とは1分31秒差だった。エース坂口裕之(3年)が体調不良で欠場した明治大は13位に沈み、まさかの落選となった。

 昨年の予選会でボーダーラインに44秒届かず、連続出場が「87」でストップした中央大は、悪夢から1年。今回は〝歓喜の予選会〟になった。

 
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酒井 政人

さかい まさと

1977年生まれ、愛知県出身。「箱根」を目指して東京農業大学に進学。1年時に出雲駅伝5区、箱根駅伝10区に出場。2年時の故障で競技の夢をあきらめて、大学卒業後からスポーツライターに。陸上競技をメインに取材して、様々なメディアに執筆している。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』(角川新書)、『箱根駅伝監督 人とチームを育てる、勝利のマネジメント術』(カンゼン)、『東京五輪マラソンで日本がメダルをとるために必要なこと』(ポプラ新書)。


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