東海大が目指す箱根駅伝。そこには〝世界〟を目指す「ストーリー」があった。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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東海大が目指す箱根駅伝。そこには〝世界〟を目指す「ストーリー」があった。

箱根駅伝ノート 第2回

いまや年始の国民的行事となった箱根駅伝。数々の名勝負が多くの人の心をとらえてきたが、そのドラマは箱根路の217.1kmを走る前から始まっている。日頃の練習の合間に書いた日誌、内省、試合報告書に綴られた記録とともに、箱根を目指す選手たちの1年を追った「箱根駅伝ノート」を12月に上梓。自身、元箱根駅伝ランナーでもある酒井政人氏に、2018年箱根駅伝の展望について語っていただいた。

最強世代の2年生を引っ張る關颯人と鬼塚翔太。

 2018年の正月に開催される第94回箱根駅伝。今回は4連覇を狙う青山学院大、出雲駅伝をスピードでねじふせた東海大、全日本大学駅伝で20年ぶりの優勝を飾った神奈川大の〝3強対決〟が予想されている。

 3校とも目指すは箱根駅伝の「総合優勝」に変わりはないが、そのなかで東海大は特に〝偏った指導〟をしている。それは今年6月の戦い方にもあらわれていたと思う。全日本大学駅伝予選会は主力選手の起用を見合わせながらも2位で通過。日本選手権は大学では最多となる6名もの長距離選手を出場させたからだ。そして1500mでは全日本予選を〝免除〟された館澤亨次(2年)が大混戦のレースを制して、「日本一」に輝いている。

 館澤は前回の箱根駅伝で5区を任された選手。1500mと20km以上の距離で戦う箱根駅伝は、求められる能力が違うため、両レースで結果を残すのは簡単なことではない。しかし、東海大には館澤のように箱根駅伝を活用しながら、トラック種目で「東京五輪」という大きな〝獲物〟を狙っている選手が何人もいる。

 今年の2~3月には關颯人、鬼塚翔太、阪口竜平の2年生トリオが、米国・オレゴン大へ〝短期留学〟している。その目的は箱根駅伝のためではない。トラックで世界を目指すために、ハイレベルな経験を積むためだ。チームの指揮を執る両角速駅伝監督は「箱根駅伝」を最優先に考えて、選手たちを指導しているわけではないという。

「チームとしてはやっぱり箱根駅伝です。でも、ごく数名はその域を超えています。その者たちは、『箱根駅伝は通過点』という認識でやらないといけません。チーム目標が箱根駅伝でも、全員が自分の持ち味や個性を封印して箱根に向けてじっくり取り組むのではなく、本人たちの特徴を伸ばすことを考えながらやっています。箱根で勝つことよりも、重視しているのが来年の日本選手権で戦うための準備です」

 両角監督の言葉通りに、東海大の選手たちはトラックで好タイムを連発した。今季日本人学生のトップ10には、5000mで關(2位/13分35秒81)、鬼塚(3位/13分38秒58)、阪口(4位/13分41秒09)、三上嵩斗(8位/13分47秒26)。1万mでは鬼塚(2位/28分17秒52)と關(4位/28分23秒37)、三上(8位/28分32秒24)、川端千都(9位/28分32秒94)がランクイン。箱根駅伝の登録選手16人には他校ならエース級といえる1万m28分30秒台の小松陽平(2年)と塩澤稀夕(1年)を「20kmにはまだ対応できませんから」(両角監督)と外している。

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酒井 政人

さかい まさと

1977年生まれ、愛知県出身。「箱根」を目指して東京農業大学に進学。1年時に出雲駅伝5区、箱根駅伝10区に出場。2年時の故障で競技の夢をあきらめて、大学卒業後からスポーツライターに。陸上競技をメインに取材して、様々なメディアに執筆している。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』(角川新書)、『箱根駅伝監督 人とチームを育てる、勝利のマネジメント術』(カンゼン)、『東京五輪マラソンで日本がメダルをとるために必要なこと』(ポプラ新書)。


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  • 酒井政人
  • 2017.12.19