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箱根駅伝名門校の挫折。その激動の時代を過ごした4年生の意地とプライド

箱根駅伝ノート・中央大学 第3回

箱根駅伝予選会、4年生としての意地

 課題のスタートは出遅れることなくいけたが、そこで安心してしまい気付いたら真ん中より後ろにいた。5000mで集団から離れてしまい、そこから粘れたとは思うがタイムは良くなかった。プレッシャーと向き合う部分に関しては上手くいったが、違うメンタルの部分の弱さが出た。調子が良い時は年に数回しかなく普通や悪い状態の時もあるし、その方が多い。その中で走らないといけない。

「全日本予選会は2組が終わった時点で厳しいかと思ったんですけど、3組で一気に盛り上がって急にプレッシャーを感じたのもあります。自分と堀尾が最終組でしっかり走れていれば通過できていたと思うので、情けないですね。僕にとっては最後のチャンスでしたし、チームを全日本に連れていけず、悔しかったです」

 全日本予選の後は順調だったが、8月に左アキレス腱を痛めて、3週間ほど本格的なトレーニングができなかった。ポイント練習に復帰したとき、藤原監督から「箱根予選会までにどこまで戻すつもりなのか?」と尋ねられた竹内は、「最低でも集団走を引っ張れるところまで戻します」と答えている。それがチームの戦略になった。

 昨年の箱根予選会は竹内がフリーでタイムを稼ぐ予定だったが、チーム11番目(64分05秒)に沈んだ。最上級生として同じ過ちを繰り返すことはできない。今年の予選会は4年生が集団走を引っ張るミッションを引き受けた。 

 竹内が61分切りの集団を、江連と蛭田が62分切りの集団をペースメイク。竹内は最初の5㎞は15分10~15秒で行く予定だったが、15分04秒で通過した。「レースの流れのなかで第2集団につくか迷ったんですけど、天候も涼しかったですし、速い集団に乗っていた方がいいと判断して、そのまま行きました」。最上級生が15㎞までしっかりとナビすることで、下級生たちをしっかりとサポートした。そして竹内はチーム6番目(60分53秒)でフィニッシュ。前年の悔しさを晴らして、正月の晴れ舞台に向かう。

「実力的には堀尾、中山、舟津の3人が抜けていますが、『自分は3区を走りたい』とずっと思って取り組んできました。目標にしてきた『区間5位以内』で走り、最初で最後となる箱根でしっかりアピールしたいです」〈第4回に続く〉

(『箱根駅伝ノート』より構成)

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酒井 政人

さかい まさと

1977年生まれ、愛知県出身。「箱根」を目指して東京農業大学に進学。1年時に出雲駅伝5区、箱根駅伝10区に出場。2年時の故障で競技の夢をあきらめて、大学卒業後からスポーツライターに。陸上競技をメインに取材して、様々なメディアに執筆している。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』(角川新書)、『箱根駅伝監督 人とチームを育てる、勝利のマネジメント術』(カンゼン)、『東京五輪マラソンで日本がメダルをとるために必要なこと』(ポプラ新書)。


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