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スーチー氏「ロヒンギャ」解決を阻む3つの壁

【ロヒンギャ】を根本敬氏が徹底解説2/3

「今さら聞けない」ニュースのキーワードについて、「分からないことはなんでも聞いちゃう」いまドキの社会人、トオルくんとシズカちゃんが第一人者の先生たちに話を聞いていきます

難民の保護が最優先

トオル…アウンサンスーチーさんも「ロヒンギャ」に対してすごく慎重になっていることがわかりました。

シズカ前回、スーチーさんは「ラカイン問題調査委員会」を発足させたと教えてもらいました。そこで進展はあったんですか?

根本(敬:上智大学総合グローバル学部教授、専門はビルマ近現代史)
委員会は2つの答申を発表しました。「ラカイン西北部に住むムスリム(=ロヒンギャ)の移動の自由を認めるべき」「彼らのなかで世代を超えてこの地に住む者には国籍を付与すべきである」ということです。これはロヒンギャ問題の解決に前向きに取り組もうとしていたアウンサンスーチーさんにとっても追い風となるはずでした。

トオル…はずだった?

根本答申が公表された翌日未明、政府軍を襲撃する事件が発生。犯行は、「アラカン・ロヒンギャ救世軍」(ARSA)によるものでした。軍は一方的にロヒンギャの一般住民を封じ込め、国から追い出すべく弾圧を加え、そのため委員会の答申のニュースは吹き飛んでしまい、また答申に沿った取り組みへの道も遠のきました。

トオル…なかなか問題解決に向けて前に進まないですね。

シズカ…先生はロヒンギャ問題をどうやって解決すればいいと思っていますか?

根本まず一番初めにやらないといけないのは難民の保護でしょう。60万人以上の難民が避難したと言われていますが、避難先のバングラデシュの街や村は、物理的なキャパシティを超えています。そして、薬も食べ物も足りていない。援助を行い、彼らが安全に過ごせるようにしないといけません。そして、中長期的な目標ではアナンさん率いる委員会の答申をミャンマー政府が推し進めることが大切です。

 
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根本 敬

ねもと けい

1957年(昭和32年)生まれ。国際基督教大学大学院比較文化研究科博士後期課程中退。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授などを経て、上智大学外国語学部教授。専攻、ビルマ近現代史。


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