地下鉄日比谷線・東武線直通の座席指定列車「THライナー」に乗る |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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地下鉄日比谷線・東武線直通の座席指定列車「THライナー」に乗る

スタートから3か月、「密」にならない通勤ライナー

■日比谷線をクロスシートに乗って移動

終点の久喜駅に到着したTHライナー

 東京メトロ日比谷線の霞ヶ関駅と東武伊勢崎線の久喜駅を結ぶ直通の座席指定列車「THライナー」が、2020年6月6日より運行を開始した。いわゆる「通勤ライナー」のひとつで、東武東上線のTJライナー、西武線と東京メトロなどを直通するS-TRAIN、京王ライナーと同じくクロスシートにもロングシートにもなるデュアルシートを採用した電車だ。これまでロングシートの電車しか走っていなかった日比谷線をクロスシートに乗って移動できるとあっては、一度は乗ってみたいと思いつつ、コロナ禍のためずっと乗車をためらっていた。

 世の中が少しは落ち着いてきた9月中旬の週末、やっとのことでTHライナーに乗ることができた。通勤ライナーなので、朝は埼玉県の久喜駅から日比谷線内に直通し、夜のラッシュ時は、霞ヶ関駅から久喜へ向かうダイヤになっている。平日の霞ヶ関駅発久喜行きは、1号の18時02分発が最初で、1時間に1本の運転で、最終の霞ヶ関駅発は22時02分だ。用もないのにお試し乗車をするのなら、車窓も楽しみたい。そう思って土休日のダイヤを見ると、1号は霞ヶ関駅発16時02分で久喜駅到着は17時17分。これなら、9月でも何とか明るいうちに全区間を走行できそうだ。というわけで、この電車に乗ることに決めた。

THライナーの行先表示板

 座席の予約は、ネットでできるので東武鉄道の予約サイトで行った。駅の自動券売機でも予約できるけれど、沿線の住人ではないし、券売機では席の位置まで決められない。この手のデュアルシート車両は、ドアのすぐ後ろの席に当たると、構造上、窓がない戸袋の部分に座ることとなり車窓が楽しめない。それで、予約サイトのシートマップを見ながら、車窓を楽しむのに不自由しないドアとドアの間に3列あるクロスシートの真ん中の列の窓側を確保した。乗車日当日の午前だったので、まだ予約は入っておらず、好きな席を選ぶことができたのである。

 THライナーの始発となる霞ヶ関駅には余裕をもって発車の30分以上前に到着した。ホームにはTHライナーの表示がいくつもあり、指定券発売機はホーム中程の5号車乗車口付近にある。休日の霞ヶ関駅は官公庁が閉まっているため閑散としている。少しは電車を待っている人もいるけれど、指定券発売機の前には誰もいなかった。すでに予約済なので券売機に用はない。きっぷを発券することもなく、チケットレスで乗れるのは便利だ。

霞ヶ関駅のポスターと指定券券売機

 数本の電車を見送った後、東武動物公園行きの電車が到着。ホームで電車を待っていた乗客のほとんどは、この電車に乗ってしまった。席がほぼ埋まる程度の混み方だ。この次が待望のTHライナーで、発車時刻まで3分しかない。前の電車の発車後1分も経たないうちにTHライナーの車両が中目黒方面から入線してきた。7両編成の車両それぞれ1か所だけドアが開く。1号車だけは最後尾のドアが、2号車以降は一番前のドアが開いた。誰も並んでいなかったので、ゆっくりと車内へ。後に続く人はいなかったので、のんびりと車内の写真を何枚か撮って予約した席を探した。荷棚の横棒に席番が小さく書いてあって意外に探しにくいけれど、何とか席を見つけて腰を下ろす。「指定券がなければ乗車できません」という注意放送が繰り返されるのを聴いているうちにドアが閉まり、電車は滑るように霞ヶ関駅を後にした。見回すと私の乗った車両は私以外誰もいない。
 ちなみに、たびたび繰り返される車内放送の優しい女性の声は、女子鉄アナウンサーの久野知美さんによるものだ。

ガラガラの車内

「密」でない状況は好ましいけれど、少なくても2~3人は乗っていてもいいのにと思う。閑散としすぎる車内はちょっと寂しい。闇の中が明るくなり日比谷駅を通過、次の銀座駅で早くも停車した。2人ほど乗って来たものの、「指定券が必要です」の車内放送を聴くと慌ててホームに飛び出していく。THライナーの存在を知らなかったようだ。というわけで、銀座を出ても独りぼっちだ。

 日比谷線内に先行車両を追い抜く設備はないので、THライナーはゆっくりと進む。東銀座、築地、八丁堀と通過して茅場町駅に停車。この駅でも車内放送を耳にするとすぐに降りていく人がいた。

 秋葉原駅で男性が1人、上野駅で中高年の夫婦が一組乗ってきて、ようやく4人となった。上野を出ると次の停車駅は東武線の新越谷。もっとも、北千住駅では東京メトロの乗務員が東武の社員と交代するため、少しだけ停車するとの案内放送があった。

車端部はロングシート

電源用コンセントが使える

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野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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