倒産カウントダウンが始まった!! 生き残れる飲食店、先のない飲食店【街金:テツクル&不動産:あくのふどうさん】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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倒産カウントダウンが始まった!! 生き残れる飲食店、先のない飲食店【街金:テツクル&不動産:あくのふどうさん】

コロナ禍の都内飲食業界の現状

■客数80~90%減の飲食店の現状

 緊急事態宣言が全面解除された6月19日。それまで午後8時までしか営業できなかった居酒屋なども、5月26日より午後10時までの営業が認められ、12日からは午前5時~午前0時まで営業できるようになっていた。緊急事態宣言の解除や自粛警察の監視の目が緩むのに比例するように、街にも人が戻ってきていた。同時に店内利用をする顧客も増え、厳しい状況に追いやられていた飲食店も、上向き始めていた売り上げにほっと胸を撫で下ろしていただろう。
 だが、一方で新型コロナの感染者数は密かに再び増加し始めていた。6月26日以降は毎日50人以上の感染が確認。7月に入ると東京都での新規感染者が100人を超す日も増え、再度東京アラートが発令されるのかと、恐れを抱く飲食店オーナーも少なくないのではないだろうか。
 そこで今回、特に厳しい状況に追いやられた飲食業界の現状について、「ぼく、街金やってます」(KKベストセラーズ)の著者である街金業者のテツクル氏と、不動産ブローカーで自身も飲食店を2店舗経営しているあくのふどうさん氏に聞いた。

 実際、飲食店の懐事情はどうなのだろうか。
「今回、こっぴどくやられているのが都心の店。渋谷、新宿など山手線のターミナル駅も、神保町や大手町などオフィス街も全滅。新大久保など局所的に客足が戻っているところもありますが、6月いっぱい経っても都心の人並みは戻ってきていません。もちろん、飲食店も閑古鳥。うどん屋やカフェのように食事がメインのところはまだマシなんですが、居酒屋系は厳しいですね」(あくのふどうさん氏)
 自粛期間中に、慌ててテイクアウトやデリバリーを取り入れた店舗も多いが、もともと安価な店は回転数で稼ぎ、高価な店は客単価で稼ぐことをベースにしている中~大型店舗は、なかなか売り上げを戻せないのが現状だ。
「三軒茶屋や中野など住宅街が近い街で営業している、地場に根ざしたお店はしっかりお客さんが戻ってきていて、すでに売り上げも100%回復したところも出てきています。でも、常連をしっかり掴んでいないところは、しばらく厳しい状況が続くでしょうね」(あくのふどうさん氏)
 夜に繁盛する飲食店に関しては、不運なことに風評被害も受けている。それは、風営法1号に規定される「接待を伴う飲食店」(ホストクラブ、キャバクラ、ナイトクラブなど)と混同されてしまったことだ。自治体は、当初「接客を伴う飲食店」と言ったため、あたかも居酒屋や割烹、ダイニングなどにも足を踏み入れてはいけないと誤解した人が多くあらわれた。

 実際、神保町で居酒屋を営む店主はこう語る。
「オフィス街だったので、潮が引くように街から人がいなくなりました。本当に、人っ子一人歩いていない状況で、愕然としましたよ」
 当然売り上げも落ちていった。
「3月は例年の20~30%減でしたね。でも、本格的なダメージは4月に入ってからやってきました。1週目は50%減だったんですが、その翌週からは80~90%減とみるみるうちに客足が落ちていった。マックスで70席あるのですが、一卓しか客がいないなんていうのもざらでした」
 そのため、4月の半ばにはアルバイトのスタッフを1名解雇。店主もフロアに出て注文を受けて回った。
「料理人が辞めてしまったら店は続けていけませんから、しっかり給料を払い続けました。これが痛かったですね。給付金や助成金をフルに申請しましたが、赤字は免れません。4月、5月は私の給料はナシでしたので貯金を崩して食いつなぎました。とにかく今をしのごうと、カードのキャッシングも使いました。持続化給付金が降りた時は、涙が出るくらい嬉しかったですよ」

 また、小岩で定食屋を営む店主もこのように言う。
「うちのエリアは、お客さんが来るだけでなく、同業者同士が互いに店を行き来して経済が回っていたようなところがあるんですよね。でも、今回、飲食業者が全員貧乏になっちゃった。だから、支え合うこともできなくなった。客が来ないせいで食材がだぶついちゃってるんだろうね。刺身なんかでも黒ずんだような古いのを出す店もあるよ。こんなの考えられなかったことだよ」
 どれくらい客が来るのか予測が立てられないため、食材を無駄にしたり、アルバイトのシフトもうまく立てられず、経費を必要以上にかけてしまった日も度々あったという。こういったことにより、飲食店は徐々に徐々に窮地に追いやられていった。

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「マンガ版 ぼく、街金やってます」(1話150円)
原作:中山美里
原案協力:テツクル
画:門倉卍貴浩

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中山 美里

なかやま みさと

フリーランスの編集ライター。編集プロダクション・オフィスキングを営む。日刊ゲンダイで「年収300万円でも愛人囲えます」連載中。アダルト、お金が得意ジャンルで、アングラカルチャーの取材・執筆を中心に活動。「週刊SPA!」「マイナビウーマン」など雑誌からWEBまで幅広く記事を執筆。KKベストセラーズのnoteで「マンガ版 ぼく、街金やってます」の原作も担当。

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