藤井聡京大教授「第二波に備え『8割自粛』を徹底検証すべし」【緊急反論④:「効果の無い自粛」が多数あることが判明。以後、一律自粛を回避せよ】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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藤井聡京大教授「第二波に備え『8割自粛』を徹底検証すべし」【緊急反論④:「効果の無い自粛」が多数あることが判明。以後、一律自粛を回避せよ】

集中連載「第二波に備え「8割自粛」を徹底検証すべし」

■(4)ゴールデンウィーク中には「自粛」しているのに感染拡大速度が上昇

 ところが、GW期間中に状況は一変します。今年のGWは、最も広く取ると4月25日(土)から5月10日(日)の間なのですが、その間に、感染拡大スピードが拡大している様子が見て取れます。

 ここで、GW中の様々な施設での滞在時間の推移に着目しますと、GWの開始時点と終了時点とではほとんど変化が見られません。つまり、人々はGW中、政府や西浦氏の要請に従ってしっかりと自粛を続けていたのです! にも関わらず、感染拡大スピードが大きく上昇していったわけです。
 これはつまり、「活動時間」では量りきれない何らかの原因で感染スピードが上がったという事を意味しています。

 では、その「何か」とは一体何かと言えば、それは言うまでも無く、活動の「質」「中身」です。
 つまり、活動の「頻度」や「時間」でなく「中身」が、GW前とGW中とでは全然違うものだったと考えられるのです。例えば、GWは同じ時間を過ごすにしても、親戚や友人達で集まって「食事」「宴会」「ホームパーティ」をする機会が増えたという可能性は十分考えられます。

 一方で、GWが終われば、感染拡大スピードは横ばいになる様子が見て取れます。
 つまり、GW中、人々は自粛を続けていたものの、活動する場合の「内容」を変えたことで、感染拡大スピードが大きく上昇したと考えられるのです。

 このことは、「自粛するか否か」より「一体どういう活動をするのか?」と言うことの方が、感染拡大スピードに対してより大きな影響を及ぼしている事を意味します。
(なお、GW中、親戚や友人と会食する機会が増えて感染が広がったのなら、西浦氏が言う「接触機会」が増えたと言えるのではないか、という方はいると思います。しかし、GW中は職場や取引先、通勤の電車・バス等で接触する人は大幅に減少しているのは明白。だから、このGoogleデータでは分からない「接触頻度」で考えても、GW中にとりたてて増えたと考えることは困難だと思われます。だから仮に「接触」に着目するとしても、西浦氏が削減することを要請した「接触の頻度」でなく、「接触の中身/質」こそが問われなければならなかったのです)

■(5)「自粛」して効果のある活動は一部。「効果の無い自粛」は多いという疑義濃厚

 このように、活動の頻度を下げるという「自粛」それ自身には一定の効果が見られる可能性もあるものの、その影響の大きさはむしろ限定的であり、「海外との往来の規制強化」や「活動の内容や質の改善」の方がより大きな支配的要因であると考えられます。

 それでは、具体的には一体、自粛の効果というのはどれくらい「限定的」なものなのかを、改めて統計的に分析してみることとしましょう。
 統計分析にはいろいろな前提が必要となりますが、その前提をここで詳らかにするのは少々冗長になりますので、その詳細を表1にまとめて記載しました。そしてその前提の下での「回帰分析」と呼ばれる方法で分析した結果が表2となりました。

 一般の方には少々解釈しづらいと思いますが、この分析結果が意味していることを、分かり易く解説いたしますと、以下となります。

『まず、(食料品や薬局を除く)デパート等の小売り店舗や、様々な娯楽施設で過ごす時間が減れば、感染拡大スピードが若干減ることが分かった(ただし、係数を見ると、その効果は、「活動時間が10%減って、感染拡大スピードがようやく約3%減るという限定的な水準)。

 その一方で、その他の活動、すなわち、公園利用時間や、食料品店利用時間や薬局利用時間、職場での仕事時間、そして、電車やバスの利用時間などを減らすための「自粛」は、感染拡大スピードを抑止する効果は統計的には確認できなかった。

 なお、表1に示した単純な「相関係数」での分析からも全く同様の傾向が読み取れる。有意だったのは小売り・娯楽施設だけでそれ以外の施設には有意な相関が見られない。しかも有意だった小売り・娯楽施設についての相関係数も0.36と統計学的には「弱い相関」と呼ばれる水準のものであった』

 つまり、「デパート等の小売り店舗や、様々な娯楽施設での活動の自粛」には、統計的な効果が「幾分」は確認できたものの、それ以外の公園、スーパー、仕事の活動や電車・バスでの移動などの自粛には、統計的な効果は確認できなかったわけです。

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藤井 聡

ふじい さとし

1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授(都市社会工学専攻)。京都大学工学部卒、同大学院修了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科研究員、東京工業大学助教授、教授等を経て、2009年より現職。また、11年より京都大学レジリエンス実践ユニット長、12年より18年まで安倍内閣・内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)、18年よりカールスタッド大学客員教授、ならびに『表現者クライテリオン』編集長。文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。専門は公共政策論。著書に『経済レジリエンス宣言』(日本評論社)、『国民所得を80万円増やす経済政策』『「10%消費税」が日本経済を破壊する』『〈凡庸〉という悪魔』(共に晶文社)、『プラグマティズムの作法』(技術評論社)、『社会的ジレンマの処方箋』(ナカニシヤ出版)、『大衆社会の処方箋』『国土学』(共に北樹出版)、『令和日本・再生計画』(小学館新書)、MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実(晶文社)など多数。

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