日本で大麻解禁されたなら許認可制と税制で問題アリ!【世界の大麻解禁を問う Part.4】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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日本で大麻解禁されたなら許認可制と税制で問題アリ!【世界の大麻解禁を問う Part.4】


アメリカでは嗜好用大麻が解禁された州で、あっという間にバドワイザーの売り上げを抜いたという衝撃のニュースが昨年にあった。グリーンラッシュといわれる世界的な大麻解禁の流れの中で、現在カナダで経営コンサルタントとして活躍している工藤悠平氏がはじめての著書『マリフアナ青春治療』を上梓。公認会計 士論文式試験の直前に頸椎ヘルニアを発症。激痛に耐えながらも、日本の病院で処方される薬が効かず、激痛に悩む毎日。そこで医療大麻での治療をネットで見つける。藁をもすがる気持ちで、海外へと大麻治療の旅に出た著者の異色青春ノンフィクション。著書の工藤氏が、日本の大麻事情の闇と合法化への道のりについて語る。


■大麻解禁の問題点

 もし日本が大麻を解禁したらどのような欠点があるのだろうか 。
 解禁されたカナダにおいては徐々にこれまであまり語られなか った大麻の悪いところも認識されはじめている。


 まず一つ目は『匂い』問題だ。
 大麻の匂いはそれを裸でもっていると、例えるなら香水を付けすぎた状態ともいえるほどキツい。中にはその匂いを好む人もいるのだろうが、多くの人はその強すぎる主張に迷惑をしているよ うだ。
 カナダでは特に身の回りの匂いに気を遣う傾向があるようで、 解禁されたとしても大麻のエチケットとして匂いには気を遣って欲しい、というのが国民の本音のようだ。カナダでは大麻用の防臭グッズは解禁前から普及していたのだが、それは当時大麻が違法だったからこそ、その匂いを隠すために普及していたとも捉えることができる。
 現在、カナダにおいて嗜好用大麻が合法化されたことにより空港の喫煙所ですら大麻の喫煙が可能となった。空港のような人気の多いところで四六時中喫煙者が存在する、といった状況まではいかないながらも(そもそも空港に大麻が売っているわけではない)、やはり街中で大麻の匂いを感じることは増えているよう に感じる。ある程度は慣れてしまうのだが、それに対してイヤな思いをしている方も一定数は存在するようだ。

 二つ目の問題点として税金の回収が上手くいっていないという点も懸念されている。
 税金回収も含めて、現在のカナダにおいての大麻産業の成り行きをみていると、必ずしも万全な法改正ではなかったように感じざるを得ない。あまり語られることはないようだが、カナダでの大麻の完全解禁は見切り発車をしてしまった感は否めないほどに現在も法的には不安定なのだ。

 それでは具体的にどのような問題が発生しているのか。
 カナダでは大麻の解禁後、大麻販売店や農家へ政府が免許を交付し、政府が中間的なチェックをしたうえで正規店から販売されるというシステムを採用している。しかしながら、解禁前から営業活動をしていた業者らの全てに免許が発行されたわけではなく、大麻の解禁後も無免許のまま政府を介さずに販売し続けている業者が後を絶たないようだ。
 当然政府を介さずに販売してしまう業者に対しては、税金の徴収ポイントを政府が管理できないというリスクが生じてしまっている。

■カナダ政府が残した課題

 なぜこのような問題が発生してしまったのか。
 そもそもカナダで現在、違法営業している農家の方々というのは十数年間それを生業としてきた、という方も多いとのこと。ところが合法化当初、カナダ政府はそれなりの産業規模として存在していた大麻販売店の数を急激に減らそうとしてしまったのだ。そうなると当然それらで生活をしていた人達からの反発が起きてしまう。
 しかしながらカナダ政府はその反発を抑えようと免許の発行を厳しくすることで店舗型の大麻販売店は実際に激減させてしまった。これにより違法業者は生活のためにネット販売などに舵を切ったようで、未だに完全には排除できていないという状況なのだ。
 さらに生産業者を摘発しようにも種さえあれば育てられる大麻は、どこで誰が事業規模で生産しているのかということの把握が困難という環境も存在するようなのだ。
 またその逆も存在する。法律遵守で営業していた事業者の中にも、政府への免許申請を出しても許可がなかなか下りずに廃業を余儀なくされたとの声も出てしまっているようだ。このまま改善せずにいってしまうと真面目な業者ほど潰れてしまうのではないだろうか? 大麻の法整備については今後もカナダ政府の動
向からは目を離せない。
 カナダは主要先進国では先手を切って大麻を解禁しただけあってこのような問題が事後的に起きてしまっている。しかしながらヨーロッパ諸国はカナダの失敗から学ぶことでより先進的かつ合理的な法整備を模索しながらの、より発展した解禁となっていくだろうと筆者は予想している。

 つまりグリーンラッシュはさらに加速すると感じている。それはなぜか。

 ここまではカナダにおいて現実に起きている問題を取り上げたのだが、日本に住んでいる皆さんは『それならもう一度禁止にするのか?』と疑問を持つだろうか? どうやら一度解禁された大麻は、カナダやアメリカ、ヨーロッパではもはや民間意識にあった大麻に対する『危険』というイメージは過去のものとなりつつある。上記の問題があってもなお大麻を解禁するだけのメリットもあるのだ。

■大麻で家や車も作れる?

 それはどういうことなのだろうか。
 皆様は大麻の利点や効能について考えたことがあるだろうか?
 大麻は日本においては薬物としての遊び目的で手を出すイメージが定着してしまっているようだが、世界的には大麻解禁の利点は何も薬物としての目的に限られない。
 現在カナダでは石油産業からの脱却にかなり力を注いでいる。実は石油産業からの脱却のためにも隠れた大麻のメリットがある。あまり知られていないが、石油から作られる製品の多くは大麻からも代替的に生産が可能なのだ。
 例えば、麻布というように大麻から作ることができる繊維では服なども生産可能であり、種からは油も取れるなど、大麻はかなり様々な用途に利用可能な上、植物としての生長も速いのだ。
 さらには最近では大麻に含まれる成分がデトックス効果や美肌効果もありそうだ、とのことで化粧品や石鹸にまで大麻成分が使われるようになってきた。欧米ではしまいには大麻で車や家を作った、という人達まで現れている。
 さすがに北米での現在の大麻の派生商品は過熱しすぎているようにも感じるため、信憑性が疑われる部分もあるが、やはりアルコールほどの危険な薬物ではなさそうだとのことで、日々新しい研究もなされているというのが現状だ。

 これから大麻解禁の議論が日本でも始まれば、日本の技術や安定した法制度の構築スキームをもって、カナダでの上記のような失敗を避けた運用可能な法改正も可能なのではないかと筆者は感じている。
 そして、メリットとデメリットを正しく把握することで本質的な大麻に対する議論が日本でも進むことを筆者は心から願っている。

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工藤 悠平

くどう ゆうへい

実業家/投資家

1986年生まれ。青森県むつ市出身。実業家。投資家。早稲田大学大学院会計研究科(英文学位: MBA)修了後、事業再生コンサルタントを経てカナダへ移住。カナダ政府、難民保護課勤務『マリフアナ青春治療』が初著書。

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  • 工藤 悠平
  • 2020.03.27