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日本に「英語教育」がなくなる日

「最小限主義の心理学」不定期連載第8回

 加速する「幼児期の英語教育」

 日本にはしっかりとした英語教育がある。中学1年から始まった世代が大半だが、今後は小学生から授業が始まる。なぜ義務教育に英語が組み込まれているのかというと、「子どもたちに英語を習得してほしい」という大人たちの願いがあるからこそだ。
 しかし、学校で教わる前に、日本人の子どもたちが英語を習得してしまう時代が来るかもしれない。正確に言うと、英会話を習得してしまう時代だ。
 幼児期の英語学習の勢いは止まる気配がない。インターナショナルスクールやバイリンガル幼稚園が人気で、家庭ではDVDアニメによる教材学習も盛んだ。一部では日本人の親が英語だけで子どもに話し続けるという方法が実践されているし、成功の気配を見せている。

 10月下旬に発売された拙著『娘に英語で話し続けたら、2歳で英語がペラペラになった。』(ワニブックス)は、0歳から日本人の父親が娘に簡単な英語で話し続け、英語のアニメなどを使って英語が話せるようになった日々を綴ったものだ。
 しかし、この本の内容に関して、すぐに著者である私のもとに、お叱りのメールが届いた。
 本に書いた「教えない」という方法で、英語が習得できるわけがないという内容だった。英語はしっかり勉強という努力があってこそ、話せるようになるのだという。彼には独自の英語習得メソッドがあるらしく、理論で攻める文調には決して折れることのない自信が垣間見える。
 最近、彼も3歳の孫に英語を教え始めたらしく、「完璧に正しい方法で教えなくてはならないのだ」という主張だった。
私としては、本に書いたとおり、英語、英会話を「教えることなんてできない」と思っている。
 まず、生まれてくる子どもに親が願うのは、読解力ではなくて、会話力の習得だ。話せるようになる前から、日本語の読み方や漢字、文法を教える親はいない。日本語という言葉や話し方がわからない幼児に対して、日本語の文法を教えることなんてできない。その点においてメソッドは存在しないのだ。
「はい」「いいえ」の意味さえ、誰も教えることはできない。

 「英会話」は教えられない!?

 私もただ、簡単な英語で話しかけ続けることしてできなかった。最初は、「ハロー」だ。娘に最初に言った言葉が「モア」。1歳になったころにイラストのカードを見せて、犬や家といった単語を言ったのが唯一の教育的なこと。「What’s this?」と私は問いかけるが、「What’s this?」が何を意味するのか、説明さえできない。あとは「モア」と言えばミルクを注いであげた。「使える」ということを彼女が知るためだ。0歳のころから英語の映画や歌の動画を見せたのは、自然と興味を持ち続けることができるようにするため。2歳以降は娘は英語のアニメを観て、楽しみながら言葉をどんどん覚えていった。キャラクターの動きを見て、すべて推測で使い方をマスターしていくのだ。一緒に観ていた私の英会話力も劇的に向上した。
 最初はYesとNoの違いもわからず、私も説明ができなかったが、娘はいつのまにかそういった基本的な言葉の意味を理解していった。
残念ながら、私にはメソッドがなかったし、英語で説明したところで、理解できないのだから意味がない。

 

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沼畑 直樹

ぬまはた なおき

ミニマリスト。テーブルマガジンズ代表。元バックパッカー。

2013年、「ミニマリズム」「ミニマリスト」についての記事を発表し、佐々木典士氏とともにブログサイト≪ミニマル&イズム(minimalism.jp)≫をたち上げる。 著書は、小説『ハテナシ』、写真集『ジヴェリ』『パールロード』(Rem York Maash Haas名義)など。


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