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会社で大きなトラブルが起きたときこそ、火中の栗を拾うべし

小説家・江上剛が説く、40代ビジネスマンのための問題解決法

ビジネスマンは日々多くのトラブルに遭遇します。大きな問題に直面した際、それを解決した時の自分への評価など、余計なことは考えずに、どう対処すればいいのかということだけを考えるべきだと、小説家の江上剛さんは言います。

 

火中の栗を拾い続ければ
あらゆる問題への対処法がわかる

私は人事部に四年いた後、ちょうど40歳の時に広報部に異動しました。
そのころ、ある支店長が自殺したのです。行内の人間に騙されて不正融資をし、失踪していた人です。

失踪のことは、ものすごく気になっていたのですが、日曜でしたので私は人事部が開いてくれた静岡方面での送別ゴルフに参加していました。もし事態が動いたら連絡してくれるように、支店を管理する業務推進部には頼んでおきました。
「支店長の遺体が見つかった」と業務推進部の担当者から連絡が入りました。遺体は飛騨山中で発見されました。自殺でした。
私は人事部にいた頃、さまざまな不祥事を処理してきたので、直ちに総務部長に連絡し、遺体を引き取りに行ってくれるようお願いしました。
それから関係する部長や役員に、広報部に集まってくれるように招集をかけ、私はすぐにゴルフを中断して東京へ飛んで帰りました。

 

広報部の会議室には、関係部署の部長や役員が集まっていました。事が事なので、大蔵省に説明に行かなければならない。また警察にも対応しなければなりません。自殺の原因や不祥事の解明も進んでいません。葬儀の問題も、支店長の家族のケアのこともあります。それらのこれから起きるであろうと予想される事態と対処を黒板に箇条書きにし、部長や役員に「あなたはこれをしてください」「あなたはこれ」と、指示を出して、ものの三十分で緊急会議を終えたのです。
すると隣にいた広報部長が、私のあまりの手際の良さに驚き、「広報部はそんなことをする部署じゃない」と言うのです。私は着任早々で、まだその広報部長とは親しく話したこともありませんでした。「こんなことをしたら、広報部が全面的に責任を取らなきゃいけないじゃないか」と、彼は私をまるで異星人でも見るような目で見ました。

それに対して私は言ったのです。

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江上 剛

えがみ ごう

1954(昭和29)年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年に退行。1997年「第一勧銀総合屋事件」に遭遇し、広報部次長として混乱収拾に尽力。銀行員としての傍ら、2002年『非情銀行』で小説家デビュー。


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