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「働きがい」があふれる職場環境の作り方

【新刊発売記念】前川孝雄氏インタビュー

多くの企業が抱えている、疲弊する職場環境を変えるには「働きがい」が必要。「働きがい」は、職場の雰囲気を変え、チームワーク力を高め、成長していく――。
「崩壊する職場」を立て直すための処方箋とは? 『「働きがいあふれる」チームのつくり方』の著者・前川孝雄氏に聞きました。

――まず、『「働きがいあふれるチーム」のつくり方』(ベスト新書)を書くきっかけを教えていただけませんでしょうか。

 私は、長年この国の「働く現場」を観察し、人材育成企業FeelWorksを営み「人が育つ現場」づくりを手掛けてきましたが、今もっとも求められているものが「働きがい」であると確信しているからです。また、人は他者から認められることによってはじめて「働きがい」感じることができます。つまり、一人で「働きがい」を得ることは難しく、チームのあり方と密接に関係しているため、「働きがいあふれる」チームというテーマに焦点を据えて考察したかったからです。

――働きがいのない「崩壊する職場」の状況について教えてください

 私たちは、企業の管理職や経営幹部の上司力・リーダーップ開発の仕事を多数手掛けているのですが、特に中間管理職層の疲弊感は深刻だと思います。いまや課長層のうち9割がプレイングマネジャーといわれ、自身で短期業績目標のプレッシャーと闘いながら、部下育成やチームづくりもしなければならない。そこに疲れ果て、メンタル不調に陥る人も珍しくありません。そんな上司を見て、部下、特に若手や女性の中には管理職にだけはなりたくない、という人が増えています。マネジメントが機能していないにも関わらず、バブル崩壊以降、長くデフレ経済が続き、終身雇用や年功序列といった日本企業が強みとしてきた長期的な人材育成をまっとうできなくなってしまったため、社員の意識として会社とは距離を置き、ワークライフバランスを重視する傾向が強くなってきました。結果、互いに無関心で自分ことで精いっぱいの人ばかりが増えて、この国の職場は崩壊してきたのです。

――そのような悩みは長年続いているなか、職場改革は、なぜうまくいかないのでしょうか?

 残業禁止デーを作ったり、在宅勤務を可能にしたり、育児休暇や介護休暇などを拡充したり、多くの企業で職場改革が行われていますが、これらが本当に意味で成功している事例はまだないと私は考えています。何のために職場改革をするのかというと、従業員の「働きがい」と企業の成長をともに実現するためです。残業が減ったからとか、従業員の有給消化率が上がったということがゴールではないはずです。

――つまり、「働きやすさ」を追求しても、職場改革にはならないということでしょうか?

 

 もちろん、「働きやすさ」が改善されれば従業員の不満を減らす一因にはなります。しかし、仕事の満足を高める決定打にはならないのです。確かに、一定レベルまでは「働きやすさ」は必要です。しかし、限度を超えると、働く個人は能力を十分に発揮できないぬるま湯環境に浸り、仕事にマンネリ感を覚え、手ごたえや成長実感を感じられず、キャリアは低迷しかねません。待遇だけよければよいという“ぶら下がり社員”は定着するかもしれませんが、向上心があり仕事を通じて会社や社会に貢献し、成長していきたい人たちは、むしろ張り合いのなさや空虚さを覚えて、辞めてしまう可能性が高まるのです。

――なぜ、「働きがい」が、職場改革に有効なのでしょうか?

 「働」という字の意味は「人のために動く」と解釈できます。「働く」ことは、「傍(はた)を楽にする」という説もあります。そう考えていくと、「働きがい」は、「人のために動く喜びを感じられる」ということだと思います。

自分の持ち味や強みを活かして懸命に働き、お客様に喜んでもらえ感謝されること。仲間とともに失敗を悔しがり、ともに困難を乗り越えて成功を喜び合うこと。その積み重ねが、より善い社会を創ることに繋がっていると実感できることと考えています。子どもたちに胸を張って誇れる仕事であること……。こうした「働きがい」こそが、向上心ある人たちに求められており、この人たちが増えることで個人のキャリアも充実し、もちろん職場にも活気が生まれ、企業も成長していくのです。

――なぜ、「働きがいあふれる」チームは、閉塞感を打破できるとお思われるのですか?

 「働きやすさ」ばかり追求する職場では、一人ひとりが自身の待遇ばかりを意識し、内向き・後ろ向きな意識が広がり、他責で足の引っ張り合いが横行しがちです。一方で、「働きがいあふれる」チームでは、一人ひとりが前向き・外向きな意識で自律的に働いています。互いに尊重しあい、連携して、より善い仕事に打ち込んでいるため、閉塞感も打破できるのです。

――実際に「働きがいあふれる」職場は、どのような職場なのでしょうか?

 本書のなかでは、私たちが見てきた、「働きがいあふれる」チームの職場を多数紹介しています。組織が目指すべきビションを打ち立て、そこに多くの従業員がワクワクして働く職場、女性が主導して営業で活躍する職場、社員全員が自身のNo.2を育てることで成長し続ける職場、お給料などの待遇は好条件でなくともその大義に奮い立つメンバーが活躍するNPO団体など。ぜひ本書のなかでその真実の物語を読んでください。

――どのようにしたら「働きがい」を持つことができるのでしょうか?

 自律意識を持つことです。そして、自分が任されている仕事の目的を常に考え、その目的に沿って、裁量の範囲で改善を続けるのです。自分で考え行動したことが、よりよい結果に結びつき、誰かの役に立つと実感できれば、「働きがい」が育まれていきます。

――ありがとうございました。

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前川 孝雄

まえかわ たかお

(株)FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師

紀伊國屋書店 新宿本店、紀伊國屋書店 梅田本店、

丸善 丸の内本店、文教堂書店 浜松町店 

1位

「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベスト新書)

大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。リクルートを経て、2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「上司力研修」「育成風土を創る社内報」「人を活かす経営者ゼミ」などを手掛け、約300社で人が育つ現場づくりを支援。自らも年間100本超の講演、TV番組、雑誌に出演。YAHOO! 「前川孝雄の人が育つ会社研究室」など連載も数多く持つ。


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  • 前川 孝雄
  • 2016.08.09