余計なものを持つことの価値【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第11回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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余計なものを持つことの価値【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第11回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第11回

 

【エキサイティングな年始だった】

 

 というわけでは、年始は古いガラクタを見つけて、同時に8つほど修理をした。どれも1時間ずつくらい、少しやっては、別のものへ移り、気持ちをリセットして作業をする。とても楽しかった。4つほどは復活し、残りもいずれは蘇るだろう。今が一番寒い時期だから、工作室や書斎に籠もり、腰を落ち着けて、あれこれ考えながら、手を動かすのが面白い。

 庭に出て、鉄道を走らせたり、犬と遊んでやることが2月は難しい。ドライブも冬の道路は危険なので控えるつもりだ。その分、インドアで暗躍する毎日である。今年も相変わらず、こんなふうに遊び続けよう。

 

ガレージのスチールラック。ジャンク品、修理品、仕掛け品、さまざまなものが積まれている。箱に仕舞うと姿が見えなくなるから、眺められない。こうして、いつでも目につくようにしておくと、発想を誘発される。まさに、「収納」の反対。つまり、「展開」か。

 

文:森博嗣

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森博嗣先生のBEST T!MES連載「静かに生きて考える」が書籍化され、2024年1月17日に発売決定。第1回〜第35回までの原稿(2022.4〜2023.9配信、現在非公開)に、新たに第36回〜第40回の非公開原稿が加わります。どうぞご期待ください!

 世の中はますます騒々しく、人々はいっそう浮き足立ってきた・・・そんなやかましい時代を、静かに生きるにはどうすればいいのか? 人生を幸せに生きるとはどういうことか?

 森博嗣先生が自身の日常を観察し、思索しつづけた極上のエッセィ。「書くこと・作ること・生きること」の本質を綴り、不可解な時代を見極める智恵を指南。他者と競わず戦わず、孤独と自由を楽しむヒントに溢れた書です。

 〈無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状況といえるだろう。人間は何故生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものなのだから、辻褄が合っている。〉(第5回「五月が一番夏らしい季節」より)。

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森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

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