「子どものことは学校に任せる」学校依存度が極めて高い〝親と地域〟が、教師を疲弊させている【西岡正樹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「子どものことは学校に任せる」学校依存度が極めて高い〝親と地域〟が、教師を疲弊させている【西岡正樹】

1月中旬より、カンボジア、タイ、ベトナムの小学校を訪問するため、バイクの一人旅に計画している西岡正樹氏。

  

◾️「地域」や「家庭」の教育力はなぜ減退したのか?

 

 昨今、「学校」以外の場所で子どもたちが問題行動を起こすと、多くの場合、「学校」に連絡がきて、

「学校の方で対応してください」

という事が多い。

 「学校」への依存度が高まるにつれ、それに反比例するように「地域」(学区内地域)や「家庭」の教育力は小さくなっていく。そして今では、「地域」の教育力は無いに等しい。教育力を完全に失った「地域」では、子どもが大人の影響を受けなくなり、子どもが問題行動を起こしても、地域の人たちは直接対応できなくなった。

 6年前だった、私が担任していたクラスの子どもたちが学区内にある神社の神殿に絵(いわゆる落書き)を描いたことがあった。放課後、子どもたちは神社の敷地内に秘密基地を作り、大好きなポケモンをあちこちに描き、秘密基地が神殿の床下だったということもあり、柱や敷板にも絵を描いてしまったのだ。ご丁寧に柱には「入口」という文字まで。監視カメラに子どもたちの様子がしっかりと映っていたので、○○小学校の児童だとすぐに判明した。

 すぐさま、その情報が学校にもたらされた。そして、管理職が写真付き名簿で確認したところ、私のクラスの子どもだということが分かり、当たり前のようにクラス担任の私が対応することになった。その日の放課後、神社の管理者(氏子総代)に、その様子やそれまでの経緯を伺って、前述のような事実が分かった。また、当たり前のように担任としてその場で謝罪をした。そして、「学校でも子どもたちから話を聞き取り対応していきます」という旨を伝えた。その後、学校に戻り2家族の保護者に連絡し事の経緯を伝え、学校と家庭でどのように子どもを指導していくのか、内容を確認し合ったのだ。

 今、その事を振り返ると、出過ぎたことをしてしまった(まずは保護者に任せるべきだった)のではないか、という思いに至る。子どもがどこで何をしていたのか、「学校」としてその情報を得たいと思うことはあるのだが、学区内の子どもに関するすべての問題行動に対して「学校」が対応するべきではない、と今では思っている。子どもたちが問題行動を起こしたとしても、それが「地域」や「家庭」内であるならば、まずは「学校」ではなく、「地域」や「家庭」の教育力に委ねなければならない。それは、「学校」ばかりではなく、「地域」や「家庭」も子どもの育ちの場であるからだ。それなのに何故、「学校依存」の割合が高くなってしまったのかを考えた時、私が行なったような出過ぎた行動(周りからの要請もある)が、「地域」や「家庭」の教育力を減退させる一因になっていると思えてならないのだ。

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西岡正樹

にしおか まさき

小学校教師

1976年立教大学卒、1977年玉川大学通信教育過程修了。1977年より2001年3月まで24年間、茅ヶ崎市内の小学校に教諭として勤務。退職後、2001年から世界バイク旅を始める。現在まで、世界65カ国約16万km走破。また、2022年3月まで国内滞在時、臨時教員として茅ヶ崎市内公立小学校に勤務する。
「旅を終えるといつも感じることは、自分がいかに逞しくないか、ということ。そして、いかに日常が大切か、ということだ。旅は教師としての自分も成長させていることを、実践を通して感じている」。
著書に『世界は僕の教室』(ノベル倶楽部)がある。

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