私がスポーツジムに通う理由【新保信長】『食堂生まれ、外食育ち』36品目
【隔週連載】新保信長「食堂生まれ、外食育ち」36品目
その間、ジムも営業再開したり、また休業したりと右往左往で、こっちもなかなか判断に迷うところだった。感染リスクのある場所はなるべく避けたいというのもあるし、マスクをしてのトレーニングというのも息苦しい。そのうえ、飲食店に対して時短だの酒類の提供禁止だの、意味不明の措置が取られていた。
コロナ禍における飲食店いじめのような施策については言いたいことが山ほどある。少なくとも一律の「8時閉店」には何の意味もなかった。限られた時間帯に客が集中して、むしろ密を招いたと思う。制限すべきは「閉店時間」ではなく「単位面積当たりの人数」だろう。時間を制限するなら「トータルの営業時間」と「客の滞在時間」を制限したほうが密を避けられたし、客側にとっても利便性が高かったはず。酒類の提供禁止についても、酒がダメなのではなく会話、会食がダメなのだ。一人で黙って飲み食いする分には問題ない。とにかくすべてが的外れだった。
そんななか、私のジム通いもピンチを迎える。せっかく習慣化していたものが中断したうえに、マスクというハードルができ、至福の一杯も味わえないとなれば、モチベーションはダダ下がり。2021年の2月に休会し、結局そのまま行かなくなって退会してしまう。人生2度目のスポーツジム退会である。
しかし、そこからまた少し年齢を重ねてますます体力の低下を感じる今日この頃。コロナが収束したわけではないが、運動後のあの一杯のうまさと楽しい時間を再び味わうためにも、もう一度入会してみようか……と思っていた矢先に、肝心の昼呑み食堂が閉店してしまった。建物老朽化による建て替えのための閉店で、再開予定はあるらしいが具体的にいつになるかはわからない。
ほかにも昼呑みできる店がないわけではない。が、ジムを出て目の前の店に飛び込んでジョッキのビールを飲む快感は何物にも代えがたかった。生涯3度目(そしてたぶん最後)のジム通いが始まる日は来るだろうか。
文:新保信長