サハリンの夜【新保信長】『食堂生まれ、外食育ち』32品目
【隔週連載】新保信長「食堂生まれ、外食育ち」32品目
ホテルへの帰り道、歩きながらウオッカをラッパ飲みしているおっさんを見かけた。あとで知ったが、たいていのレストランがお酒持ち込み可で、スーパー的なところで買えばウオッカのボトル1本が当時の為替レートで200円程度。お店で頼むと倍以上した。ビールは置いてない店が多く、外国人向けのホテルのバーで飲んだら1杯700円ぐらいだった。アルコール度数と値段が合ってない。そりゃみんなウオッカ飲むわけである。
翌朝、おばさんたちが道端に店を広げてピロシキを売っていた。日本で見かけるピロシキよりかなりデカくて野球のグローブ並みのサイズである。さすがロシアは何事もスケールがデカいと感心しつつ買って食べてみたが、冷えて油の回ったピロシキは二日酔いの日本人にはいささか厳しかった。あと、泊まったホテルの部屋以外で入ったトイレはすべて便座がなかった(四半世紀前の話なので今はそんなことないと思うけど)。
6泊7日の滞在で、覚えた言葉は「ダー」「ニエット」「スパシーバ」「ダイチェ パジャールスタ チェーク」。日本語にすると「はい」「いいえ」「ありがとう」、そして最後が一番大事なフレーズ、「領収書ください」である。
文:新保信長