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禁断の吐き方に騒然! 片岡凜出演の「リエゾン」が浮き彫りにした「痩せ姫」フィクションの魅力と現実の闇

人気ドラマ「リエゾン」に摂食障害を抱える女子高生役で片岡凜が迫真の演技で注目((c)テレビ朝日)

 

 

 ドラマ「リエゾンこどものこころ診療所-」(テレビ朝日系)の第4回で摂食障害がとりあげられた。

 同名マンガを原作とするこのドラマは、子供の精神医療がテーマだ。この回では受験の失敗を機にダイエットを始め、拒食気味になってから、過食嘔吐にも進む朱里という女子高生(高1)が登場。治療を経て、回復に向かおうとするところまでが描かれる。

 そのなかに、当事者というべき痩せ姫の界隈が騒然となる場面があった。物語の後半、朱里がスマホで「摂食障害」について検索。画面にチューブ(ホース)の写真とこんな文章が映し出される。

「吐きダコもできないし、チューブ吐きオススメ!! #摂食障害 #チューブ吐き」

 そう、ハイリスクだが、ある意味ハイリターンでもある、禁断の吐き方の存在が示されたのだ。

 朱里はそれまで指吐きやスプーン吐きをやっていて、チューブ吐きについては試さなかったが、ネットではこんな声が飛び交った。

「チューブが広まるのはイヤだ」「何に使うか知らないでいる親にバレそう」「一生抜けられなくなるのにね」

 ちなみに、このドラマは原作にかなり忠実に作られていて、似た場面が原作にもある。そこに添えられる文章は、

「身体に負担が少なくて音もそんなしないチューブ吐き♥」「チューブ吐きは危ないからおすすめしない」「チューブの危険性を教えてもらった10分後 これから吐きます」

 というものだ。

 ただ、原作に忠実とはいえ、使われなかったエピソードもある。たとえば、副主人公でもある女性の研修医が、

「朱里ちゃんは全然太くない。私なんてこれだよ!」

 と言って、いきなり自分のお腹を見せる場面は、ドラマにはなかった。演じている女優・松本穂香への忖度だろうか。いずれにせよ、スタッフはそれよりもチューブ吐きの場面のほうに必要性を感じたわけだ。

 さらにいえば、マンガに出てくるのと、地上波のテレビで流れるのとでは、わけが違う。しかもこれまで「ザ・世界仰天ニュース」(日本テレビ系)のように、摂食障害の実話を扱うのが好きで、そのつど、痩せ姫界隈をざわつかせる番組でも、チューブ吐きが紹介された記憶はない。今回、画面に映し出されたのはほんの4秒くらいとはいえ、痩せ姫界隈には衝撃的だった。このドラマは新たな扉を開けてしまったともいえる。

 なお「仰天ニュース」がざわつかせる原因のひとつが、制限型や排出型の摂食障害ばかりを取り上げることだ。今回の「リエゾン」もそのパターンだったため、非嘔吐過食型の摂食障害をやってくれたほうがいいのにという声が目立った。

 また、友人のひとりが理解者になったことで救われるという結末についても、甘いとか安直だという指摘が。そのあたりに関しては、最後に主人公の医師が「けっして油断はできません」としたうえで、

「一度は寛解が認められたとしても、再び人生につまずいてしまったときに再発する可能性もあります」

 と語ったりするのだが、もっと大変な現実を知る人にはそれでもゆるく感じられるのだろう。そもそも、いちばん大変な現実は非嘔吐過食の理解されにくさではないか、と言う人も多い。

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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