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国境を超えアジアに広がる〝推し活〟 「羽生結弦」と「MIRROR」驚異の市場


3月10日、羽生結弦が座長を務めるアイスショーに、体操界のレジェンド内村航平がスペシャルゲストで登場。初共演となり話題となった。羽生結弦といえば、いま中国では驚異的な人気のようで・・・。「推し活」は国境を越える。


 

2022年の日中国交正常化50周年のイベントに参加した羽生結弦(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)。

 

 最近、「推し活」という言葉が流行している。古くはジャニーズ系アイドルの追っかけをする女性ファンが有名だ。最近では「関ジャニ∞」のファンはeighter、「King&Prince」のファンはティアラと呼ばれている。 K-popスターに熱狂するのも女性が中心でBTSのファンは「ARMY(アーミー)」と呼ばれるそのファン層は女子高生から中高年世代までと年齢層も幅広い。しかしこの「推し活」は従来のアイドルはもちろんだが、アニメから俳優までそのジャンルは幅広くなって来ている。

 

■中国にまで広がる羽生結弦の「推し活」ファン

 さらにこの推し活ブームは日本だけにとどまらず、アジアでも拡がりを見せている。アイドルを抑え、中国はじめアジアでトップクラスの人気を誇る日本人と言えば、何といってもフィギュアスケートの羽生結弦選手の名前が挙げられる。

 昨年7月に現役を引退し、プロへの転向を表明。11月にはフィギュアスケートのショーでは異例の単独公演を行ないチケットの争奪戦が起こり、さらには映画館でのライブビューイングまで行なう人気で話題となった。その羽生選手は中国でも断トツの人気を誇る。彼の中国ファンは羽生結弦選手の名前の中国語の発音から「柚子(ヨウ・ズ)」「哈牛(ハー・ニュウ)」などと呼ばれている。羽生選手は現役時代の2014年のフィギュアGPシリーズの中国杯、2015年に上海で開催されたフィギュアスケートの世界選手権、さらには2022年の北京オリンピックと中国での大会にも多数出場している。そのスケートの美しさはもちろん、彼の礼儀正しさ、ファンへの真摯な受け答えも中国ファンの心を掴んでいる。彼の出演する化粧品の広告も中華圏でも認知され、スケート以外での知名度も抜群である。

 その中国での人気を受けてか、引退後間もなくの20229月に東京で開かれた日中国交正常化50周年を祝う式典に羽生選手はゲストとして出席している。会場では、漢服と呼ばれる中国伝統の服装の少女と記念写真を撮るなど会場の日中ファンの声援に気軽に答える姿が、中国のニュースでも報じられた。このニュースに中国の羽生ファンからは、

「ユズは礼儀正しく謙虚で他の人とは違う」

「こうやって羽生結弦と少女が一緒に写真を撮る姿が好き。この姿を見ると中国と日本の友情は次の世代まで永遠に受け継がれると感じる」「イベントに登場したユズは中国人の好きな赤いネクタイ姿で、退場する姿に至るまで本当に細部まで気が行き届いていて完璧だ」

と、ベタ褒めである。

 この中国推し活ファンの声が届いたのか、最近の報道では羽生選手の中国での単独アイスショー開催構想も浮上している、との情報もあり、もし実現すれば現地でもプラチナチケットの争奪戦となるのは確実であろう。

 今年1月から中国もゼロコロナ政策を撤廃し、中国人旅行客の日本への渡航も段階的に緩和されると予想される。今後は羽生選手のスケートショーはもちろん、京都の清明神社など聖地巡礼に訪れる中国の推し活ファンの姿が多く見られるだろう。

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初田宗久

はつた むねひさ

香港在住のジャーナリスト

ジャーナリスト、編集者。早稲田大学卒業後、出版社で情報誌から学術系書籍まで20年間編集業務に従事。その後、香港、台湾、中国に渡り、現地で中国語を徹底的に学ぶ。中華圏の様々なニュースから日本の労働問題や芸能事情まで精通し、多くの記事を投稿し注目されている。著者に『ブラック企業やめて上海で暮らしてみました』(扶桑社)、『「中国人の9割が日本人が嫌い」の真実』(トランスワールドジャパン)などがある。香港在住。

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